イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 賢い鳥の代表格がヨウム。数や色といった抽象的な概念を理解できるそうです。そんなヨウムが人助けすることを示す実験が、スイス連邦工科大チューリッヒ校のデジレ・ブルックスさんたちによって行われました。

 まず、2羽のヨウムにリング状の金属片を渡し、人間と交換すればエサをもらえることを教えます。この2羽に、左右に並んだ2つの部屋に1羽ずつ入ってもらいます。それぞれの部屋を仕切る壁には、中央に穴が開いていて、2羽のヨウムはこの穴を通してリングをやり取りできます。そして、片方(仮に左とします)の部屋だけにリングを使って人間からエサをもらうための窓を開けます。そしてエサをもらえない右の部屋のヨウムにだけリングを渡します。すると右のヨウムはすぐに、もらったリングを壁の穴を通して左のヨウムに渡し、もらった左のヨウムはエサと交換します。つまり、右のヨウムはお隣さんを助けるのです。

 面白いのは、交換用の窓を閉め左のヨウムもエサがもらえないようにすると、右のヨウムが人助けをしなくなったことです。つまりヨウムは、自分には用無しだけれど、隣にいるヨウムには役に立つ、ということを理解してリングをあげていたわけです。これはかなり賢い。

 ところで、現代の私たちが使っているお金は、それ自体には価値はありませんが、何かと交換することで初めて役に立つものです。この実験でのリングの働きはこれとまったく同じで、ヨウムは難なくリングを扱えています。これもかなり賢い。とはいえ、お金には他にも、価値がどのくらいあるかを示したり、価値を貯蔵したりする働きがあるので、リングがお金そのものだというわけではありません。よしんばヨウムにお金を扱う能力があったとしても、自分からすすんで隣人を助ける鳥ですから、資本主義経済にはなじめないかもしれません。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。