今月で生誕100年となった俳優の故三船敏郎さんが、戦争末期に滋賀県・八日市(現東近江市)の陸軍第八航空教育隊にいたことは、知る人ぞ知る話のようだ▼一緒に赴任していた京都市の男性に話を聞いたことがある。「いわゆる『万年上等兵』。パンを焼いてくれて『食べろ。どうだ、うまいだろ』って」。おなじみの低い声をまねて懐かしんだ▼三船さんは除隊後、東宝の第1期ニューフェイスに採用され、やがてスターになる。男性はもらったはがきを大事にしていた。「気持ちがほんまに優しかったね」▼「七人の侍」「用心棒」…黒澤明監督と作り上げた鮮烈なサムライ像は世界の映画史に刻まれている。SFチャンバラでもある「スター・ウォーズ」第1作の出演を断った話も明らかになった。こちらは映画の残念史の一つだろう▼闇市のやくざ、復員兵を追う刑事など焼け跡からはい上がろうとする世相を銀幕に体現した。ファンに支持されたのは、すごみのある演技の中に、つらい時代を共にした戦友のような優しさがにじんでいたからではないか▼本来なら欧米を含め各地で特集上映が盛り上がったところだが、新型コロナウイルスの影響はやむをえない。戦後の日本を力づけた存在感。きっとコロナ後の世界も改めて魅了するに違いない。