「命は平等。年齢や障害の有無での選別は許されない」と話す京都ダウン症児を育てる親の会の佐々木さん(京都市左京区)

「命は平等。年齢や障害の有無での選別は許されない」と話す京都ダウン症児を育てる親の会の佐々木さん(京都市左京区)

 新型コロナウイルスの感染拡大で人工呼吸器や専門の病床が逼迫(ひっぱく)する中、障害のある人たちが「命の選別」への警戒を強めている。医療崩壊に直面した欧米では、障害者や高齢者への治療が後回しにされる事例が報告されているからだ。京都ダウン症児を育てる親の会(京都市上京区)などが「年齢や持病、障害の有無で医療の線引きを行うことは容認できない」と声明を出すなど、京都の関係者の間でも危機感が広がっている。

 障害者団体のDPI日本会議と全国自立生活センター協議会によると、海外では、米国アラバマ州が、障害者や疾患がある人について「人工呼吸器のサポート対象になる可能性は少ない」とするガイドラインを新たに策定している。スペインでは若い患者への人工呼吸器装着を優先した結果、高齢の患者が死亡した。オランダの障害者団体からは「高齢者や重度障害者は緊急医療の対象にならないと言われた」との報告が寄せられたという。
 日本でも政府の専門家会議が4月1日に「限られた医療資源の活用について、市民にも認識の共有を求めることが必要」と提言し、人工呼吸器の配分などで優先順位をつける局面がありうることをにおわせた。
 京都ダウン症児を育てる親の会はこの提言を危ぐする。臓器移植法や尊厳死に反対する市民団体との連名で23日に公表した声明の中で「事前の意思表示で人工呼吸器をつけない選択を市民に呼び掛けるものだ」と批判。政府に人工呼吸器の増産を求めた。
 立命館大の立岩真也教授が会長を務める障害学会も声明で、医療関係者に向けて「万が一にも障害者の生命を軽んじることがないように」と警鐘を鳴らした。
 一方、インターネット上では人工呼吸器や人工肺などの高度治療を若者に譲る「意思カード」への署名を高齢者に呼び掛ける動きがある。カードを考案した石蔵文信大阪大招聘(しょうへい)教授は医師でもあり、「ただでさえ忙しい医療関係者に命の選択まで迫るのは酷だ。人工呼吸器が足りなくなってからでは遅い。議論の一石になれば良い」と話す。
 親の会で顧問を務める佐々木和子さん(70)=左京区=は「こうした発想が一度でも正当化されると、病や障害のある人たちにも芋づる式につながっていく。医療崩壊に直面している原因は病床数削減など国の従来の施策にあるのに、そこに目を向けず弱者を切り捨てるのは問題だ」と批判する。