北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、中国の習近平国家主席の招きで北京を訪れた。米朝首脳再会談に向け、後ろ盾とする中国の支持を取り付ける狙いとみられる。

 北朝鮮の非核化を巡る米朝間の交渉は昨年6月の史上初の首脳会談以降、停滞気味だが、トランプ米大統領も再会談開催地を「遠くない将来に公表できる」と語った。対話再開の兆しを歓迎したい。

 金氏は今月1日、施政方針に当たる新年の辞で「これ以上、核兵器をつくらない」と核兵器の増産停止を明言。「いつでも米大統領と会う準備ができている」とも述べ、再会談に意欲を示した。

 金氏が肉声で国民向けに完全非核化に言及したのも、核兵器製造中断を対外的に表明するのも初めてだ。米朝交渉が行き詰まる中、国連安全保障理事会の制裁で北朝鮮経済が厳しい状況に追い込まれているに違いない。中国や韓国を引き込みながらトランプ氏を首脳会談に誘い込む意図が透ける。

 さらに金氏は昨年から4度目となる訪中に踏み切った。国交樹立70年となる新年早々、自らの誕生日に北京に足を運び、習氏との親密さを誇示し、制裁解除などへの協力を求めたようだ。米国と貿易摩擦を抱える習氏も、北朝鮮に非核化を促すことで存在感を示し、米国をけん制したのだろう。

 非核化を目指すものの、検証可能な形で実現を求める米国と、制裁解除を要求する北朝鮮の隔たりは埋まらない。だが大統領任期の折り返し点を迎えるトランプ氏が、国内外の批判の矛先をそらすため、2度目の米朝首脳会談を突如決断する可能性がある。

 とはいえ、金氏は制裁圧力を維持するなら政策変更もあり得るとけん制している。既存の核弾頭やミサイルの放棄には具体的に言及しない。トランプ氏が非核化に向けた実効性のある取り決めを得られる見通しもないまま再会談に応じ、北朝鮮ペースの展開となるのは認めがたい。米朝協議が再開しても曲折は必至だ。その進展を注意深く見守る必要がある。

 北朝鮮の非核化には、共に脅威にさらされている日本と韓国の連携が欠かせない。ところが日韓関係は昨今、徴用工訴訟などでかつてないほどぎくしゃくしている。

 北朝鮮は3回の南北首脳会談によって醸成した融和ムードを維持し、韓国を味方につけようとしている。日本だけが「蚊帳の外」では拉致問題の解決も遠のく。米韓などと足並みをそろえて対処できる外交力が問われよう。