悪質なあおり運転による事件や事故が後を絶たない。

 死亡事故や暴力事件を誘発する恐れもあり、厳しく取り締まる必要がある。罰則の強化など根絶に向けた議論を加速させたい。

 茨城県の常磐自動車道で先月、あおり運転をした男が後続車を停止させて運転手を殴り、逮捕された。

 あおり運転の危険性が改めてクローズアップされ、政府は厳罰化を検討している。自民党も現行法が想定していない危険行為が相次いでいるため、あおり行為の規制や罰則強化に向けた法整備の検討を始めた。早ければ秋の臨時国会での法改正を目指すという。

 ドライバーの約7割があおり運転に遭った経験がある、との調査結果もある。極端に車間距離を詰められたり、蛇行運転や急な車線変更、幅寄せ、クラクション、ハイビームで威嚇されたりして、恐怖を感じる経験をしたドライバーは少なくないだろう。

 あおり運転は、神奈川県の東名高速道路で2017年に無理やり停車させられた車の夫婦がトラックに追突され、死亡した事故などを契機に社会問題化。警察庁は18年、あらゆる法令を駆使した摘発を全国の警察に通達した。

 その結果、昨年1年間にあおり運転による「危険性帯有者」への免許停止の行政処分は過去最多の42件。道交法の車間距離保持義務違反の摘発も前年からほぼ倍増の約1万3千件に上った。なお悪質運転が横行し、警察が対策を強化している状況がうかがえる。

 特に悪質な場合は自動車運転処罰法の危険運転致死罪や刑法の殺人罪が適用され、有罪判決も出ている。あおり運転に対する社会の目は極めて厳しいといえよう。

 とはいえ、道交法にあおり行為を直接罰する規定はない。あおり運転の態様によっては危険運転致死罪や殺人罪の適用が拡大解釈に過ぎるとの指摘もある。危険な運転自体を正面から処罰する法整備や厳罰化が必要ではないか。

 法整備と併せ、取り締まりの強化が欠かせない。京都府警や滋賀県警などは高速道路でヘリコプターによる監視を導入し、ドライブレコーダーの映像を活用した摘発も強化している。期待したい。

 決してあおり運転をしないというドライバーの意識向上も図りたい。車の中はプライベート空間で自己本位になり、他の車へのいら立ちを抑えにくくなりがちだ。人の命を奪いかねない危険な行為と自覚し、我慢や道を譲るなど相手を思いやる運転を心掛けたい。