事件の主な争点

事件の主な争点

 京都府福知山市で2013年、1歳7カ月の三女を窒息死させたとして、傷害致死罪に問われた母親の長谷川亜由美被告(30)の裁判員裁判の判決が11日、京都地裁である。被告は逮捕時から一貫して無罪を主張しており、犯行を目撃したとする当時15歳だった被告の妹(21)の証言の信用性が最大の争点だ。弁護側は証言内容の変遷や証人尋問での曖昧な受け答えから「証言は虚偽で信用できない」と主張する。物証がない中、揺らぐ証言を裁判員がどう評価するのかが注目される。

■弁護側「証言は虚偽」

 起訴状によると、13年5月16日未明、福知山市の自宅で、三女の恋音(こはね)ちゃんが泣くことに腹を立て、口にウエットティッシュ様のものを詰め込んだ上、全身を毛布で包み込んでヘアゴムで縛るなどし、窒息死させた、としている。

 公判記録によると、事件当日の朝、被告が「三女が息をしていない」と消防に通報。三女は病院で死亡が確認された。福知山署は当初、事故死とみて証拠品の押収などはしなかった。司法解剖で死因は特定できなかった。

 しかし約2カ月後、被告方に同居していた被告の妹が、姉との関係の悪化で家出し、保護先の福知山署で「姉の暴行を目撃した」と打ち明けた。被告が三女に以前から複数の暴行を加えており、「三女の口にティッシュを詰め込み、何枚もの毛布でぐるぐる巻きにして髪留めで縛るのを見た」と証言。現場検証時の写真に、ベビーベッドの毛布の隅にゴムが写っているのが確認され、捜査が本格化した。府警は16年5月、殺人容疑で被告を逮捕し、地検が傷害致死罪で起訴した。

 公判では妹の捜査段階で供述の変遷が明らかになった。目撃したとしていた口への詰め込み行為は「見ていない」に訂正され、三女を包み込んだ毛布は「複数枚」から「1枚」に変わった。毛布の包み行為の目撃場所も「自分の布団の中」から「姉のそばに立っていた」と変更された。

 妹の証人尋問では、供述の変遷について「覚えていない」「話しているうちに思い出した」と説明し、質問に沈黙する場面も目立った。弁護側は、妹の証言の不自然さから「証言は虚偽」と主張する。

■検察側「根幹部分に一貫性」

 一方、検察側は証言の変遷を認めつつ、虚偽の証言をする動機はなく、「毛布で包んでヘアゴムで縛った」とする証言の根幹部分は一貫していると強調。事件から時間が経過している点や妹の記憶能力が低い特性などを踏まえ「細部の記憶が薄れてもやむを得ない」とした。

 死因については、検察側は、最も合理的に推定できる死因は窒息死と主張し、弁護側は、窒息死の前提となる妹の証言は信用できず、突然死や事故死の可能性が排除できないと訴えた。

 検察側は懲役7年を求刑。被告は最終弁論で「妹や検察官が言うようなことは絶対にしていないし、するはずがない。逮捕時は妊娠中で体調が悪かったが、疑いを掛けられたまま死ねないとの思いで厳しい取り調べにも耐えてきた。どうか子どもたちとの生活を返してください」と訴えた。