5月1日 若葉のころ
 宇治の民謡が原詞の一つと言われる文部省唱歌「茶摘み」の八十八夜は、立春から88日目のこと。うるう年の今年は本日です。野にも山にも若葉が茂る…と聞けば、ビージーズの歌「若葉のころ」も浮かびます。
 1960年代末の英国のヒット曲。71年公開、愛らしい初恋映画「小さな恋のメロディ」で使われましたね。京都の映画館も超満員でした。歌の原題は「First Of May」(5月1日)。本日です!

5月2日 そよ風のゼリー
 「五月のそよ風をゼリーにして持ってきて下さい」。1939年3月、病床の立原道造が死の1週間前、お見舞いに来た友人に頼みました。「非常に美しくておいしく、口の中に入れると、すっととけてしまふ青い星のやうなもの」。四季派の叙情詩人は、当時国民病とされた結核に冒され、魅惑の5月を夢みたまま旅立っていきました。享年24歳。立原の思い描いた「そよ風のゼリー」って、どんな味だったのでしょうか?

5月3日 さつきとメイ
 5月は「皐月(さつき)」であり「May」なのですが、これはアニメ映画「となりのトトロ」の姉妹の、爽やかな名前となっています。清流に冷やした野菜、緑濃い森、土の道、木の家。私の故郷・滋賀にも当たり前にあった美しい風景です(オバケだってきっといたのでしょう)。不便でも夢はある、つましく優しい昭和30年代の日本を描いた本作の公開は1988年で、それももう32年前のこと。昭和は実に遠くなりました。

 

~50年後の「小さな恋のメロディ」~

<文 澤田康彦 絵・題字 小池アミイゴ>

 13歳の娘と2人で「小さな恋のメロディ」を見ました。外出自粛時でなくても元々京都の夜は暗く静かで、家庭での映画鑑賞は気分的に盛り上がります。適度な音量でも言葉や音楽がくっきりと聞こえる(気がする)のは、去年まで住んでいた東京、けんそうの新宿とは大違いです。

 「わあかわいい制服!」。娘がメロディ(トレーシー・ハイド)のチェックのスカート姿に反応しました。時が流れてもティーンの心を騒がせる成分がこの映画にはあるのです。

 公開当時のぼくは滋賀県能登川町(現東近江市)という田畑だらけの土地に生息、欧米への憧れが身体組成の90%を占める20世紀少年で、都会であるところの彦根や京都の映画館にこの英国製初恋映画を見るためだけに通っていたものです。京都はまだ地下鉄がなく、小遣いも乏しく、駅から四条までは徒歩でした。

 その約50年後、ぼくは京都に住み、隣には娘がいて、ファーストシーンの「イン・ザ・モーニング」を口ずさんでいるなんて、タイムトラベルしているよう。少し前までは「プリキュア」に夢中だった子が洋画の字幕を読めるようになったのか…なんて立ち位置はメロディの父さん。おおぼくはいつのまに美少年マーク・レスターから太ったロイ・キニア(父役)に変わってしまったのだろう?

 「若葉のころ」は、5月の最初の日に思う歌。木漏れ日溢(あふ)れる新緑の中のデートシーンで、ビージーズが甘酸っぱく謳(うた)い上げます。

 5月-誕生石はエメラルドと翡翠(ひすい)、フランスでは贈り合うというスズラン。京都は葵祭(今年は路頭の儀、中止)。どれも美しい緑のイメージです。一年でそよ風が最も心地よい。「小さな恋」のようなすてきなものが芽吹く月です。コロナ禍、辛抱の日々が続きますが、きっと新しい大切な何かが生まれているはず。

 5月に連載が始められるのは幸せです。ちょっとあがってます。これから11カ月、ご一緒にわくわくドキドキしてください。

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澤田康彦 さわだ・やすひこ 1957年生まれ。編集者・エッセイスト
小池アミイゴ こいけ・あみいご 1962年生まれ。イラストレーター