新型コロナウイルスの感染拡大による学校の休校で、児童・生徒の学習の遅れへの懸念が高まっている。

 政府は緊急事態宣言を1カ月程度延長する方向で調整に入り、休校期間もさらに延びることが予想される。京都や滋賀では、すでに延長を決めている自治体がある。

 学校の再開時期が見通せない中、入学や始業を9月にずらす案が浮上してきた。学習の遅れを一度リセットできる利点が見込めるためという。

 欧米で新学期が秋に始まることなどを念頭に「大変革の好機」ととらえる意見もあるようだが、社会の仕組み自体を大きく変える必要がある。ハードルは極めて高いと言わざるを得ない。

 重要なのは、子どもたちの「学び」をどう保障するかである。拙速に議論を進め、児童・生徒に負担を強いるようなことがあってはならない。

 複数の知事が政府に検討を促している。安倍晋三首相も4月30日の参院予算委員会で、慎重な意見もあるとした上で「さまざまな選択肢を検討していく必要がある」と答弁し、視野にあることを認めた。

 学校の9月スタートは、これまでも議論になってきた。2006年に発足した第1次安倍政権は、教育再生会議を設けて大学の9月入学を議論した。東京大も11年に、国際標準に合わせるため秋入学への移行を検討している。

 だが、高校卒業後に空白期間が生まれるなどの慎重論が出て、いずれも立ち消えになっている。実現には、義務教育の年齢を定める学校教育法などの法令改正が必要との指摘もある。行政機関の会計年度や企業の採用時期ともずれが生じる。

 検討すること自体は否定しないが、今からでは新型コロナへの対応で改正や変更が追いつかない可能性が高い。学校をいかに正常に戻すかに力を注ぐべきだ。

 文部科学省は、段階的な学校再開に向けて、小学1、6年と中学3年の登校を先行させる案を自治体に示した。登校時間をずらすことも再開への選択肢になるとした。

 学校は密閉、密集、密接になりがちで、教職員や保護者には不安の声もある。政府や自治体は「3密」を防ぐ学校の態勢づくりを支援する必要がある。

 不安は子どもたちにも広がっている。退職教員の手を借りるなど、児童・生徒の学びを助ける人員を手厚くすることも求められる。