朝の空を見上げ、風と雲行きを確かめてこいのぼりを揚げる。庭やベランダ、2階の窓…と場所や大きさは違っても、5月の日課としている家庭もあるだろう▼由良川源流域や琵琶湖岸の集落など、取材の先々で新緑に泳ぐコイの家族を見上げてきたことを思い出す。過疎に悩む地に、のぼりが揚がっているだけで頼もしく感じた▼こんな句もある。<落人の里高々と鯉(こい)のぼり>渡辺恭子。山深い里で命が継がれていることに心を動かされたのか。こいのぼりは「ここで子どもを育てている」と宣言する父母や集落の旗印にも見える▼きょうは端午の節句。端午は薬草を摘み邪気を払う中国の風習に由来する。香りが強い菖蒲(しょうぶ)を軒に差したり、皇帝の夢に現れて病魔を退治したという鍾馗(しょうき)さんの絵を床の間に飾ったりするのも疫病退散の願いを込めている▼枕草子にも「菖蒲、蓬(よもぎ)などのかをりあひたる、いみじうおかし」とある。男児の節句となったのは江戸時代からというが、近年は子どもの性別に関係なく、こいのぼりを揚げる家もあるそうだ。健やかな成長を願う親の気持ちは変わらない▼休校は延長され、不自由な日々が続く。青空にコイを放つように子どもを外で思い切り遊ばせたい。親子で空を仰ぎ「コロナよコロナ飛んで行け」と叫んでみたくなる。