京都文化博物館に設置された、「京都アニメーション」を支援する募金箱(京都市中京区)

京都文化博物館に設置された、「京都アニメーション」を支援する募金箱(京都市中京区)

 京アニ放火殺人事件の被害者・遺族向けの義援金を税制面で優遇する仕組みは、京都府が政府に要望してわずか1カ月で開設されることになった。犯罪被害者支援では前例がない。京アニに寄せられた多額の支援金を被害者らに非課税で全額届ける対応を急いだ結果で、政治判断の色合いが強い。善意の受け皿が整った半面、税制は公平性を第一とするだけに、今後の事件や事故の被害者支援のあり方に一石を投じた。

 京アニが7月24日に開設した口座には、国内外の企業や個人からわずか1週間で10億円を超す支援金が寄せられた。ただ、被害者や遺族に配分しようとすると一時所得として課税される可能性など課題があった。

 府は「寄付金全てを被害者や遺族に届けたいとの京アニの意向」(戦略企画課)を踏まえ、同30日、政府に税制上の特例措置を要望した。その4日前には、超党派の議員連盟が政府に同様の対応を要請している。税制優遇は慎重な検討が不可欠だが、事件の社会的な影響の大きさもあって、災害義援金の枠組みの活用が浮上しスピード決着となった。府幹部は「官邸の意向を強く感じた」という。

 犯罪被害者支援としては、警察庁の給付金や、公益法人「全国被害者支援ネットワーク」(東京都)の緊急支援金などの制度があるが、税制優遇を伴って寄付金を直接、被害者らに分配する仕組みはない。6日、記者会見で西脇隆俊府知事は「今回のケースは一つの前例となるだろう。犯罪被害者救済という観点では政府の検討課題となるのでは」とした。

 税制を専門とする立命館大の望月爾(ちか)教授は今回の特例措置を評価した上で、「今後、犯罪や事故の被害者に対しどう判断していくのか明確でなければ、税制の公平性は維持できない」と指摘。犯罪被害者支援団体などへの寄付金は、今回の義援金の仕組みより優遇の度合いが小さく、「寄付税制全般や、被害者支援のあり方について見直す必要がある」としている。