川端署の警察官を前に、性暴力被害について語る早川さん(京都市左京区・川端署)

川端署の警察官を前に、性暴力被害について語る早川さん(京都市左京区・川端署)

 なぜ、女性が同意せず強要された性交が「性犯罪」にならないのか―。性暴力撲滅を目指す「フラワーデモ」が京都を含め全国へ広がる中、日本の司法制度への疑問が高まっている。刑法の性犯罪規定は2017年に大幅改正されたが、「暴行・脅迫」がなければ強制性交罪に問えないなど、被害実態に合わない旧弊が残るためだ。

 昨年3月、当時19歳の娘に対する準強制性交罪に問われた男を無罪とした名古屋地裁岡崎支部の一審判決には、衝撃を受けた。中学生の頃から続いた性的虐待や暴行を認めながら、性交を拒んだ経験もあったことから、同罪の成立要件である「抗拒不能(抵抗が著しく困難)」な状態とは認めなかったのだ。これで無罪なら何が性犯罪なのか、不条理な判決に怒りを覚えた。

 日本でレイプを犯罪として立証するハードルは高い。被害者が性交に不同意なだけでは足りず、強制性交罪には「暴行・脅迫」が、準強制性交罪には酒や薬物、精神支配などによる「心神喪失か抗拒不能」状態が条件となる。これらの規定は刑法ができた1907(明治40)年から変わっていない。

 「京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター」の周藤由美子さんは「今の刑法では事件化できないような性暴力も多い」と打ち明ける。職場で優越的な立場にある上司からホテルに誘われて、関係悪化を恐れて拒否できないといった相談が寄せられたという。

 周藤さんは司法や捜査が「男性目線」で行われてきたことが背景にあると指摘する。「女性が必死に抵抗すれば被害は防げた」「泥酔して男性の家に入れば何をされても仕方がない」という誤った考えは今も根強いという。

 法務省は今年、刑法の性犯罪規定の見直しを検討する。周藤さんが共同代表を務める「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」(東京都)など12団体は昨年末、暴行・脅迫要件を撤廃して「不同意性交罪」を新設することなどを同省に要望した。イギリスやドイツは「同意のない性交」を刑事罰の対象とするなど、海外では性犯罪を幅広く捉える国もあるという。

 「あの瞬間、私は人間ではなく物のように扱われた。自分の存在を否定され、悲しみも痛みも感じなかった」。昨年12月、川端署で性犯罪被害者の早川恵子さん=愛知県豊橋市=の講演を取材した。16年前、コンビニに止めた車内で休んでいると、男が突然乗り込んできて首を絞められ、性的暴行を受けた。

 被害を忘れようと働き続けたこともあれば、自殺願望や無気力に苦しんだ日々もあった。「毎日生死を選択して生きていた。自分を取り戻すには、とてつもなく長い時間がかかった」と明かした。

 性暴力に苦しむ人や不条理な無罪判決をこれ以上生んではいけない。被害者の声に耳を傾け、実態に即した法律に変える必要があるのではないか。