後に経営の神様と呼ばれたパナソニック創業者の故松下幸之助氏も苦渋の決断を迫られた。1929年、米国発の世界大恐慌が日本を直撃。工場閉鎖や解雇で失業者が街にあふれた▼不況で在庫がいっぱいになり、病気療養中の幸之助氏に幹部は「従業員の半減」を進言する。だが、幸之助氏は「生産は半減するが、従業員を解雇してはならない。給与も全額支給する。工場は半日勤務にし、店員は休日を返上しストックの販売に全力を傾注してほしい」▼これに全員が歓喜して一致団結。在庫が一掃され、フル生産に入るほどの活況となったと同社のホームページは記す▼新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済の歯車を止めている。安倍晋三首相は「大恐慌の時よりも厳しい状況」と危機感を示した。大恐慌などと異なり、コロナ禍は命や健康に関わる。経済活動の再開は感染の封じ込めが前提だ▼先行きに見通しが立たず、決算発表で今期の業績予想を見送った企業も少なくない。コロナ終息後の布石をどう打つかが、存亡の岐路となろう▼未曾有(みぞう)の危機だけに一筋縄ではいかないかもしれないが、幸之助氏には「不況は改善、発展への好機である」との語録もある。勤め人としてはコロナ後に一致団結して奮起できるような経営判断をトップに望みたい。