ルバキュエール裕紀さん

ルバキュエール裕紀さん

 2006年に京都市左京区でゲストハウスを開業し、17年から市内の施設経営者でつくる京都簡易宿所連盟の副代表を務めるルバキュエール裕紀さん。新型コロナウイルスの影響で、経営は開業以来最大の危機。それでも「また以前の様にお客さんを迎え入れたい」と前を向き、仲間と宿の存続へ知恵を絞る。

 車が行き交う東山丸太町交差点から大通りを少し歩き、細い通路へ入ると、一気に喧噪が遠ざかった。築約110年の町家を改修したゲストハウス「和楽庵」。扉の奥の空間は時が止まった様で、どこかほっこりした気分になる。

 京都で暮らすきっかけは、京都大受験だった。弁護士に憧れて志したが、1度目は失敗。京都市内で浪人生活を送り、再挑戦で合格した。鴨川の河川敷で過ごす時間、まちに点在する小さいけれどすてきな店…。学生時代を通じて「京都愛」が深まった。

 卒業後、外資系コンサルティング会社に就職し、拠点を東京に移した。企業の広告戦略などに関わる仕事は魅力的だったが、将来や生活とのバランスを考え、自分の店を開きたいと思うようになった。

 「なぜ日本にはゲストハウスが少ないの?」。旅先のフランスで出会った夫の言葉で、目標が定まった。店を開くなら大好きな京都、それも町家でと決めていた。半年掛けて建物の所有者を説得し、開業にこぎ着けた。

 当時、まだ京都市内にゲストハウスやホステルは少なく、宿泊客数も順調に伸びていった。最初は一人旅同士で訪れた男女が、意気投合して後に結婚したことも。「ここでの出会いが誰かの人生を変えたと思うと感慨深い」

 京都は近年、違法民泊が拡大し、他の宿泊施設に向けられる目も厳しくなった。オーバーツーリズムが指摘されるほど観光需要は急増していたが、コロナ禍で事態は一変。宿泊客が激減し、休業を選ぶ同業者も増えている。

 厳しい状況の中、かつての宿泊客や従業員から届く花や激励の手紙が支えになっている。「お客さんとの何気ない会話が楽しく、本当にこの仕事が好きだと感じる。宿を守り抜くため、この状況で何ができるかを考えていきたい」。

るばきゅえーる・ゆき 京都大法学部卒。2001年に大手コンサルティング会社・ボストンコンサルティンググループ入社。04年の退社後、国内外のゲストハウスを巡り、06年から和楽庵を営む。17年からは経営者約130人が加盟する京都簡易宿所連盟副代表。夫と子ども2人の4人暮らし。趣味はバイク。運転に集中していると悩み事を忘れられる。石川県出身。42歳。