根返りして倒れたブナ。土ごとめくれた根が壁のように立ちふさがる(12月5日、高島市朽木桑原と南丹市美山町芦生の府県境)

根返りして倒れたブナ。土ごとめくれた根が壁のように立ちふさがる(12月5日、高島市朽木桑原と南丹市美山町芦生の府県境)

 一昨年からの度重なる台風被害が、山奥の天然林に現在も爪痕を残している。京都府南丹市美山町の京都大芦生研究林と、滋賀県高島市朽木の府県境の尾根周辺ではブナが倒れ、根元部分が土ごとむき出しとなった「根返り」が壁のようにいくつも現れている。シカの食害で下層植生が衰退し、ぽっかりと空いた空間にも新たな草木が育たないため、土壌流出の懸念も高まっている。

 倒木は標高の高い尾根筋に多く見られる。研究林最高峰の三国岳(標高959メートル)周辺では、府県境に続く登山道を遮り、幹回りが1メートル以上もあるブナが何本も倒れて根が半円状の壁のようになっている。研究林で調査を続けるネーチャーガイドの福本繁さん(65)=大津市=が辺りで確認しただけでも、2017年以降の台風で16本のブナが倒れたという。

 近年、一帯では積雪が減り、食料の乏しい冬場にシカが採食するため、ササが衰退している。福本さんは「ネットのような役割を果たしたササがなくなり、根の浅いブナが倒れやすくなったのではないか」と推測する。今冬は暖冬が予想され、「積雪が少ないと雪で守られていた植物も食べられる」と危機感を強める。

 研究林長の伊勢武史准教授(森林生態学)は「台風は自然現象だが、シカの食害とセットになると問題」と指摘。「木が倒れても、森に光が入ることで若い木が成長していけるが、シカが食べると世代交代が進まなくなり、雨で土壌も流れてしまう」と食害の影響を懸念する。