とうごう・かずひこ 1945年生まれ。68年外務省入省。ソ連邦課長、条約局長、駐オランダ大使など歴任。2020年3月まで京都産業大世界問題研究所所長。現在、静岡県対外関係補佐官。

 武漢に端を発する疫病「COVIDー19」は、世界に蔓延(まんえん)し、未(いま)だとどまることを知らない。

 外交と内政は表裏一体である。まずなによりも、日本自身が、この危機を乗り越えることが日本国民の責任であると同時に、世界に対する責任である。日本の政策の出遅れ感は否めなかったが、4月7日の最初の緊急事態令の発布以降の日本政府の対応は、専門外の私にも大略正しい方向に進んでいると感ぜられる。

 なぜ出遅れたかの反省の中から、現下の基本政策のさらなる徹底ができるか否かが、これからの正念場だと思う。そのうえで、日本外交が進むべき四つの方向性をあげたい。

 第一に、コロナとの戦いの中で、「コロナウイルス登場以前」の時代において世界覇権を争う二大勢力たる米国と中国が、コロナウイルスの発症地、監視社会と民主社会の戦い方の優劣、世界保健機関(WHO)の役割、コロナ戦争終了後の覇権争い等の多方面で対立を激化させている。日本の国益は、是々非々の立場に立ちつつ、この対立の激化にまきこまれないことにあると思う。

 第二に、それとは逆に、コロナとの戦いを通じて、日本の近隣国との間で、一層の対話と提携を強める可能性がでてきたと思う。お隣の台湾の目を見張る早期抑圧、当初の大拡散を圧倒的PCR検査と分離隔離の徹底によって乗り越えた韓国が注目される。彼らの政策はいずれも、2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、09~10年の豚インフルエンザの徹底的検証のうえになりたち、いわば次のパンデミックに対し「準備万端」整えていたことが伺われる。特にこの韓国を評価し、学ぶ謙虚さをもつことは、外交関係設定以降最悪の関係にある韓国に対する日本外交の視点を変えるきっかけになるかもしれない。

 第三に、人類全体としてのこれからの主戦場は、「三密」が意味を失うような社会条件の中で生きている開発途上国、あるいは難民キャンプなどになると思われる。国際機関との連携を強めながら、これら地域を支援し、ワクチンと治療薬の開発を強力に支援し、人類としての勝利まで、リーダーシップをとることはできないか。

 第四に、日本国民としての新しい、ビジョン外交の推進である。他者からの「強制隔離」は、私たちを全く未経験の孤独においこむ。デジタル交信の改革による「繋(つな)がり」の拡大は必須としても、自然との共存、禅、茶室の思想、詩歌の習慣などの日本の思想と伝統の中に、新しい手がかりがあるはずである。日本発の世界思想こそ、今求められるのではないか。(京都産業大非常勤客員教授)