障害者や家族の立場から福祉や行政の課題を伝えてきた月刊紙「京都福祉新聞」が3月号で廃刊し、50年の歴史に幕を下ろした。病気や障害に対する偏見の払拭(ふっしょく)に取り組む一方、孤立しがちな当事者たちの漫画や俳句、エッセーを掲載し、紙面での交流も大切にしてきた。編集発行人の体調不良が主な理由で「従来の形での継続は難しくなった」としている。

 精神科医や研究者、福祉関係者らでつくる京都社会福祉問題研究会(京都市中京区)が1970年11月に発行した。タブロイド判2ページで題字は当時の蜷川虎三京都府知事の筆と伝わる。
 創刊号で「何人も常に対等。遠慮や沈黙をしてはならない」との姿勢を明確にした。福祉会館の建設要望など京都府や京都市との交渉経過をはじめ、精神科病院での身体拘束や人権軽視を告発する患者や家族の手記を掲載。昨年9月号では障害者らへの強制不妊手術を正当化した旧優生保護法の問題なども取り上げた。
 大阪地検が2009年に手掛けた障害者団体向け郵便制度悪用事件を受けて、低料金第三種郵便物制度の運用が厳しくなり、最盛期には1200部あった部数が近年では550部まで落ち込んだ。研究会代表で編集発行人の野地芳雄さん(86)=大津市=が高齢で体調を崩したのが決め手となり、580号での廃刊に至った。
 最終号では野地さんが「精神障碍(しょうがい)のある人と家族に寄り添って」と題し、昭和、平成、令和と紙齢を刻んだ半世紀の歩みを振り返ったほか、加藤博史龍谷大名誉教授のコラムや、「障害者としてのわたしは ただそれだけの人間として終わりたくない」という当事者の宣言を再掲載した。
 野地さんは「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、心の健康を崩す人が増えると見込まれる中での廃刊は不本意で残念だが、体力が限界」とした上で「後継の情報誌(紙)発行を目指す動きもある。精神保健福祉の展望が持てる内容になってほしい」と話す。
 京都福祉新聞のバックナンバーは府立京都学・歴彩館(左京区)で閲覧できる。