水の張られていない棚田。現在、府外の有志が再度の復田を目指しているが、地区として関わるのは過疎高齢化で難しいという(京都府伊根町新井)

水の張られていない棚田。現在、府外の有志が再度の復田を目指しているが、地区として関わるのは過疎高齢化で難しいという(京都府伊根町新井)

眼下に海が広がる棚田で田植えを楽しむ家族連れら(2017年5月、京都府伊根町新井)

眼下に海が広がる棚田で田植えを楽しむ家族連れら(2017年5月、京都府伊根町新井)

 傾斜地に稲が植えられ、美しい景観を生み出す棚田。しかし、管理には手間がかかり、地域による保全活動の限界も露呈する。国は、洪水対策や生物多様性確保といった機能を持つとして保全を加速させているが、過疎高齢化が進む中、保全の担い手をいかに確保するかが課題だ。

■福知山・大江町毛原地区は「オーナー制度」で継続
 日本海を望む絶景が広がる京都府伊根町新井。同地区の棚田は「新井の千枚田」として多くの人に親しまれてきた。しかし、水の張った棚田が広がる光景は2018年が最後で、今は見られない。
 同棚田は多くが耕作放棄地となったが、美しい景観を取り戻したいと大阪府内の米穀店主や地元住民らが98年に一部を復活。田植え・稲刈り体験会には京阪神などから100人以上が参加することもあった。活動に関わってきた同地区の小南栄作さん(72)は「ボランティアのつもりで携わってきた」と話す。
 一方で、田植え・稲刈り以外の水田管理は住民が受け持つなど地元負担も大きかった。石倉達也区長(66)は「過疎高齢化が進んでいる。もう棚田の管理を担えなかった」と漏らす。
 農地としての生産性が低く、維持コストの高い棚田は、全国的に荒廃が進んでいる。棚田を保全し、農村の活性化を図るため昨年6月、超党派で国会に提案の棚田地域振興法が成立、8月に施行された。
 制度では、国が都道府県の申請に基づいて「指定棚田地域」を指定する。全国17道県に278あり、資金面での優遇措置にもつながる。また国の職員が「コンシェルジュ」として、活動準備や計画策定、実施面などで地域を支援する。
 保全を持続的に進める鍵は何か。福知山市大江町毛原の棚田で活性化に取り組む「毛原の棚田ワンダービレッジプロジェクト」の水口一也代表(62)は「地域外の人の力を借りたのが成功の秘訣(ひけつ)」と話す。
 「日本の棚田百選」に京丹後市丹後町袖志とともに選ばれている毛原地区は、13戸29人が暮らす山里で、過疎高齢化の例外ではない。
 同地区の棚田オーナー制度では農機具の貸し出しや営農指導はあるが、地元は日常管理を行わない。草刈りやあぜづくり、獣害対策は京阪神などから訪れるオーナーの役目だ。先輩オーナーが後輩オーナーに指導する姿も見られるという。水口さんは「地元が管理を担っていたら継続できなかった」と話す。
 また、同組織には地元のほかに、市役所職員や市内で地域活性化に取り組む人も参加、イベント時には地元大学生なども協力する。今後、振興法を活用することも検討している。
 農林水産省は「地域ぐるみでの保全に向け、市町村や住民へ引き続き法律や制度のメリットを重点的に説明したい」と話した。