新型コロナウイルスの感染拡大を受け、穀物を中心に輸出規制をする国が相次いでいる。

 世界的な在庫からみて現状での影響は限定的とされるが、安定供給が混乱すれば途上国を中心に食料の安全保障が脅かされかねない。

 国際社会が協力して流通を維持し、食料不安を広げないようにする必要がある。

 農林水産省によると、5月1日時点で、農産物・食品の輸出規制をしているのは少なくとも15カ国にのぼる。

 ロシアやウクライナは6月末まで小麦などの輸出に枠を設け、ベトナムも一時、コメの輸出を制限した。対象品目は砂糖や鶏卵、乾燥豆、魚などにも広がっている。

 買いだめなどによる国際的な需要急増を警戒し、国内の供給を優先したためだ。

 既に国際市場では穀物価格が上昇しており、とりわけ生産基盤が乏しく、食料を輸入に頼る途上国に深刻な影を投げかけている。

 世界食糧計画(WFP)は、国際社会が迅速な行動を取らなければ、今年は世界で食料不足にさらされる人が昨年から倍増し、約2億6500万人になる恐れがあると警告した。

 世界貿易機関(WTO)のルールでは、食料が危機的に不足する事態を除き、原則として輸出制限を禁止している。

 ただ食料需給が逼迫(ひっぱく)したり、価格が高騰すれば、自国民への供給を優先して輸出規制に動くことはこれまで何度も繰り返されてきた。

 ルールが実効性のある歯止めになってきたとは言い難い。

 20カ国・地域(G20)の農相は4月下旬に臨時のテレビ会議を開き、不当な輸出規制を行わないよう緊密に行動することで一致した。「不当」に当たるかをどう見極め、対応するかが問われよう。

 感染症対策のため各国が講じている移動規制も、長期化すれば食料不足につながる恐れがある。

 既に航空機の減便などで貨物輸送が停滞し、インドや欧州では収穫に必要な移民らの季節労働者を確保できない事態も起きている。

 食料危機に発展させないためには、生産から流通までの流れを滞らせない国際協調が欠かせない。

 日本はコメを除き、小麦や大豆など多くの穀物を輸入に頼る。

 農林水産省によると、主な輸入相手国は米国やカナダ、ブラジルなどで、現時点では影響がほとんど出ていないという。

 だが、日本はカロリーベースの食料自給率が過去最低の37%に落ち込んでいる。輸出規制の広がりを軽視するべきではない。

 政府は食料安保について、国内農業生産の増大を図ることを基本に、輸入と備蓄を適切に組み合わせて確保するとしている。

 問題は肝心の農業生産の増大が一向に進まず、理念倒れに終わっていることだ。

 政府は新たな「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定したが、食料安保の確立に向けて十分な内容か、再検討する必要があるのではないか。