賃金や労働時間などの動向を把握する「毎月勤労統計」で、厚生労働省が不適切な調査を約15年間も続けていた。

 統計を基にした雇用保険や労災保険の過少支給額は500億円を超え、対象者は延べ約2千万人にのぼるという。

 追加支給の財源を確保するため、2019年度予算案を修正する事態となった。根本匠厚労相が会見して謝罪した。

 統計データに誤りがあれば、それを前提とした政策の妥当性が失われてしまう。行政への信頼が大きく揺らぐのは当然だ。

 なぜ、こんなずさんなことを続けていたのか。政府は原因や経緯を徹底的に調べて責任の所在を明らかにし、国民にきちんと説明するべきだ。

 勤労統計調査は、従業員500人以上の事業所は全てが対象になる。だが、東京都内で該当する約1400事業所のうち、3分の1程度しか調べていなかった。

 都内の大企業は比較的賃金が高いところが多いため、集計後の平均給与額は実際よりも低くなっていた。不適切調査は04年から始まっていたという。

 政府の景気判断の材料などに使われる重要な統計である。雇用保険や労災保険は労働者の大切なセーフティーネットであることは言うまでもない。国際労働機関(ILO)などにも報告されており、国際的な信用にも関わる。

 問題はずさんな処理というだけではない。厚労省は昨年12月に公表した分についても、ミスを認識しながら正しい手法で実施したかのように装って発表していた。

 さらに全数調査に近づけるようにするため、係数を掛けるなどの統計上の処理をしていた。隠蔽(いんぺい)と言われても仕方ない。

 厚労省は裁量労働制を巡る不適切データ問題や、中央省庁の障害者雇用水増しの見逃しなど失態が続いている。

 発覚した以外にも不適切な調査があるのではないか、他の省庁のデータは大丈夫か…。疑問は膨らむばかりだ。

 行政の統計部門の手薄さも指摘されている。だが、問われているのは先進国として当たり前のはずの基本的な行政の在り方だ。12年前、第1次安倍晋三政権当時の「消えた年金」問題が思い出される。

 政府、与党は参院選への影響を警戒しているが、幕引きを急ぐようなことはあってはならない。事態を重く受け止め、問題の全容解明に取り組まなければ、また同じことの繰り返しになる。