憲法が定める令状主義から逸脱していないか。

 300近い企業などが持つ膨大な顧客情報が裁判所などのチェックもなく捜査に利用されている実態が、最高検が作成した一覧表で浮かび上がった。本人の知らぬ間にプライバシーが「丸裸」にされている恐れがある。

 共同通信が入手した「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法等一覧表」は、顧客情報を持つ交通機関や携帯電話会社、コンビニなどを載せ、それぞれ情報の種類や照会窓口、入手方法、留意点などを記している。捜査当局が共有し、多様な個人情報の提供を受けているとみられる。

 入手可能な情報はカードの使用履歴や防犯カメラの映像など計約360種類。うち捜索差し押さえ許可状などの令状が必要なのは22種類だけだ。大半は捜査関係事項照会で取得できるとも明記している。これでは捜査に必要かどうか外部のチェックは働かない。

 乗車履歴や商品購入リストなどを組み合わすと、どこに出掛け、何を買ったといった私生活を網羅的に把握できる。薬局や書店の購入情報などを加えれば健康状態や思想信条さえ分析できる。

 捜査関係事項照会は捜査当局が企業などに出す要請にすぎず、情報提供に応じるか否かは任意だ。とはいえ、むげに断れないのが実情と言えよう。情報入手の手続きや運用実態が不透明であるだけに懸念を拭えない。

 捜査当局が事件解決や捜査の効率化のため、幅広い情報を集めることは理解できる。だが安易で包括的な情報取得は、令状主義をないがしろにしていまいか。

 憲法が令状に基づかない捜索や押収などを禁じるのは、権力の乱用を防ぎ、プライバシーや財産権を守るためだ。最高裁は2017年、捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を令状なく装着した警察の捜査手法を違法と断じた。一覧表にある顧客情報を組み合わせると、GPS捜査以上に危うい。第三者の監視もなく私生活の機微に触れる情報まで集めることは決して許されない。

 顧客情報の提供が進めば捜査が容易になる半面、息苦しい監視社会を招きかねない。だからこそ不透明な運用を排し、企業などが顧客情報を、どんな場合にどこまで捜査当局に提供するか、法的なルールづくりが欠かせない。

 個人情報を預かる企業も顧客のプライバシーを重んじ、本人承諾もなく提供することは企業倫理に反すると肝に銘じるべきである。