中村教授が調査した、京都府内の「餅だけ雑煮」「納豆餅」「みそを詰める餅」の分布

中村教授が調査した、京都府内の「餅だけ雑煮」「納豆餅」「みそを詰める餅」の分布

納豆に黒砂糖を練り、餅で包む納豆餅作り。京都市左京区静原や右京区京北などで伝わっている(中村教授提供)

納豆に黒砂糖を練り、餅で包む納豆餅作り。京都市左京区静原や右京区京北などで伝わっている(中村教授提供)

 甘みの強い白みそ味で知られる京の正月の雑煮は、現代のような具だくさんのおいしさを求めたのではなく、餅だけを入れた白みそ雑煮が原形で、貴重な甘い物をめでたい日に食べたい欲求に基づいていたとの見解を、大阪府立大の中村治教授=京都市左京区=が京都府内外での現地調査から導き出した。27日に左京区で開かれるイベントで発表する。

 中村教授は2016年、府内で正月に雑煮と納豆餅を食べる地域の分布をまとめた。雑煮でなく納豆餅を食べる京都市右京区京北、京都府南丹市美山町、同市日吉町で、京都市に近いほど黒砂糖で練った納豆を使う習慣があることから、「甘さへの欲求」が雑煮文化に関わっていたのではないかとみて調査を続けた。

 雑煮は室町時代の京都が発祥で、白みそは江戸初期には存在していたとの説がある。

 中村教授によると、餅だけのみそ雑煮の風習を確認できた地域は錦市場周辺(中京区)をはじめ、左京区から若狭街道(鯖街道)に沿って広がっていた。福井県小浜市ではこれに黒砂糖をかけて食べていた。

 一方、京から離れた京丹波町でも餅のみの白みそ雑煮が食べられている。これについては白みそ作りに多く使うこうじの扱いにたけた丹波杜氏(とうじ)の存在を挙げ、「甘みを求めるのに、京の人は白みそを買う財力があり、京丹波などでは自分で作る力があった」とみる。伏見の酒造りに越前杜氏を輩出した福井・南越前でも、同様に餅のみの白みそ雑煮の風習があると指摘する。

 中村教授は、雑煮文化が海のない場所でのブリやみそより後に普及したしょうゆなど、地域ごとに新年にふさわしい高級食材を取り入れながら形を変えて広がったと推測する。「砂糖があまり普及していなかった時代に、京で求められたのは甘さだった。食材が豊かになった今も、餅だけのみそ雑煮が受け継がれていることには文化的背景があると知ってほしい」と話す。

 講演は、27日に左京区役所で開催される「左京・食と伝統の文化フェスタ」内で、午後1時から。無料。