イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 昨年の終わりから今年の初めにかけて、オーストラリアで森林火災が起こり、コアラを含む多くの野生動物が被害を受けたことを覚えておられる方も多いと思います。これは大きな問題となりましたが、もともとオーストラリアの乾燥地帯は人がいなくても定期的に火災が起こるところです。あれほど大規模かつ長期的でなければ、火災は生態系を維持する役割を果たすなど自然の一部になっており、火を利用する動物もいます。

 その一つが、トビ、チャイロハヤブサなどの「ファイヤーホーク」と呼ばれる猛禽(もうきん)類です。この鳥たちは、炎が広がりつつある場所の近くを飛びまわります。火や煙から逃れようとする小動物をエサとして狙うのです。

 それだけではありません。トビたちは、まだ燃えていない場所に火を広げもするらしいのです。ペンシルバニア大のマーク・ボンタさんたちは、オーストラリア北部で、「猛禽類が火のついた小枝をくちばしでくわえたり爪で持ったりして、まだ燃えていない場所に運んで落とす」という目撃情報をたくさん集めました。多くの目撃者は、「鳥たちは意図して火を運んでいた」と述べています。

 偶然火のついた枝をつかんでしまい熱くて放したのでは? そう疑う人もいるようですが、運ばれる距離が数十メートルにも及ぶと聞くと、わかってやっていると思いたくなります。鳥たちのおかげで川や道路を挟んで火災が延焼したケースも報告されています。

 気候変動もあり、オーストラリアの森林火災は激しさを増しているといわわれています。ほどほどであれば必要といえる火災も、こうなってくると生物多様性を危機にさらします。トビたちがこれからも問題なく火を扱えるよう、気候を安定させる努力を私たちはすべきでしょう。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。