新型コロナウイルスの影響で、高齢者が自宅から通う通所介護(デイサービス)や短期宿泊(ショートステイ)の休業に踏み切る事業所が相次いでいる。

 愛知県など全国でデイサービス施設を介した集団感染が発生しており、同様のリスクを避ける狙いがあるとみられる。

 高齢者が感染すれば重症化する危険性が高いとされている。利用者の命を守る対策は最優先されなければならない。

 ただ、サービスが受けられなくなれば高齢者の心身状態が悪化するおそれがある。自宅で介護を続けている家族の負担が増えることも心配される。

 専門家からは、特に独居や「老老介護」の世帯にとって通所サービスは「命綱」で、完全休業は在宅介護の崩壊につながると懸念の声が上がっている。

 感染リスクを抑えながら、高齢者にいかにして必要な介護サービスを届けるのか。在宅介護を支える対策を急ぐ必要がある。

 厚生労働省によると、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言が全国に拡大された4月16日を含む13~19日に、858の事業所が休業していた。大半が自治体からの要請ではなく、自主的に休業を決めていた。

 通所型の施設は人の出入りが多く、利用者らが「3密」になりがちだ。サービスを入浴に絞ったり、1日の利用人数を制限したりしながら介護事業を続けている施設もあるが、それでも感染拡大のリスクと隣り合わせにある。

 厚労省は、休業した事業所の職員による訪問介護を特例的に認めた。施設を利用できない間も高齢者と交流しながら健康観察などを進めてもらい、介護報酬も支払うとした。

 こうした対応は高齢者の孤立や状態悪化を防ぐ上で有効な手だてになろう。だが、職員は普段と異なる環境で仕事をすることになる。過度な負担とならないか、注意する必要がある。

 介護従事者の多くは自分が感染するだけでなく、高齢者らにうつしてしまわないかという不安の中で仕事を続けている。

 そもそも、介護従事者は仕事の負荷が重い割に賃金が低い。2018年9月時点の介護職員の月給は、全産業平均に比べ6万円以上少ない。介護業界の深刻な人手不足の一因になっている。

 コロナ禍で離職者が増えるようでは、在宅介護は立ちゆかなくなる。政府は介護従事者の待遇改善も早急に検討すべきだ。