京都市内のドラッグストアでも精製水は売り切れとなっていた(京都市中京区)

京都市内のドラッグストアでも精製水は売り切れとなっていた(京都市中京区)

 自宅で持病の治療に精製水を使っているが、入手できず困っている-。不安を訴える声が京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。新型コロナウイルスの拡大に伴い、家庭で精製水と無水アルコールを混ぜて消毒液を作る人が増えたことが品薄の一因と考えられ、製造元は「無用な買い占めは控えて」と話している。

 京都市内に住む男性(56)は睡眠時無呼吸症候群で、CPAP(シーパップ、経鼻的持続陽圧呼吸療法)と呼ばれる治療の装置を毎晩つけて眠る。付属の加湿器に精製水を入れ、適切な湿度・温度の空気を鼻から気道に送り込む。水道水に含まれるカルキによる故障を防ぐため、装置のメーカーは精製水の使用を推奨し、男性の場合は500ミリリットルのボトルを4、5日で使い切る。
 心臓にも難病を抱える男性にとってCPAPは不可欠という。だが、4月に入ってからは薬局を2、3軒回っても精製水は在庫切れで、4月下旬からは煮沸した水道水で代用している。今のところ装置に不具合はないが、「(治療以外の用途で)代替できる人は買うのを控えてもらえないか」と訴える。

■消毒液作りには水道水を


 精製水を製造する昭和製薬(大阪府守口市)の品質管理担当者によると、同様の相談は毎日10件ほどあり、そのうち8~9割はCPAP装置の利用者。精製水が品薄となったきっかけは3月以降、無水エタノールと精製水を使った消毒液の作り方がネットで広まったこととみられ、「作り方に関する問い合わせが1日100件以上ある」と話す。
 一方、問い合わせの中には、薄める必要のない「消毒用エタノール」を精製水と混ぜたいというものや、精製水そのものに消毒効果があると勘違いしている例もあるといい、「今の状況では、消毒液のためなら水道水でも問題ない。その場合は薬局に返品するようお願いしている」と話す。別のメーカーの健栄製薬(大阪市中央区)も「品薄に関する問い合わせが増え、増産に努めている。無用な買い占めは控えてほしい」と訴える。

■「一般用」が品薄に

 精製水は水道水などをろ過、殺菌して不純物を取り除いたもの。人工透析や人工呼吸器、無菌室治療にも使われ、自家精製する医療機関もある。昭和製薬によると「医療用医薬品」として病院に販売する精製水は、通常通り供給できているという。難病などの在宅医療を担う梁山会診療所(京都市北区)の田中直樹医師は「人工呼吸器ユーザーには精製水を渡しており、今のところ不足はしていない」と話す。


 品薄となっているのは、処方箋なしで薬局で購入できる「一般用医薬品」としての精製水。近畿厚生局によると、CPAP装置や人工呼吸器に使う際、医師が必要と認めた場合は医療保険の対象となり、病院が処方することは可能だ。しかし、CPAP装置の場合は精製水を患者の自己負担としている病院が多い。背景には、CPAPの診療報酬が精製水と装置の費用をまとめて算定する仕組みになっている上、報酬点数が低く、精製水を保険診療に含めれば病院負担が増えるという悩みがある。精製水がない場合、加湿器の清掃やこまめな水の取り換えなどをした上で水道水を使うよう助言している病院もある。一方、装置のメーカーは水道水などの代用を推奨していない。