「合意なき離脱」という選択肢を考え直す時ではないか。

 現在は10月末が期限となっている欧州連合(EU)からの離脱を巡り、英国政治の混乱が一層深まっている。

 7月に就任した離脱強硬派のジョンソン首相が議会を約1カ月間閉会する手続きを取ると、議会は即座に離脱を延期させる法律を通過させた。

 ジョンソン氏は議会の主導権を奪還するため解散総選挙を提案する動議を2度にわたり下院に提出したが退けられた。

 成立した離脱延期法は、10月19日までにEUとの離脱協定案を議会が承認しなかった場合は、離脱期限を来年1月末まで延期することを政府に義務づける。

 合意がなくても10月末に離脱すると宣言しているジョンソン氏が公約を果たすには、EUとの離脱協議を早急にまとめるか、下院を説得して承認を得るしかない。相当高いハードルである。

 英国では、合意なき離脱でEUに大きく依存している生鮮食品や医薬品の供給が滞り、社会に深刻な影響がある、と英政府が予想していることが先月、明らかになった。

 英国で製品をつくりEU全域で販売している外国企業は、生産拠点の移転に動き始めている。日本企業も例外ではなく、社会、経済へ与える影響は英国一国にとどまらない。

 ジョンソン氏は「EUに離脱延期を伝えるくらいなら、のたれ死にした方がまし」と公言する。しかし、自らが率いる保守党からも離党者が相次ぐなど、強硬離脱への支持が広がっていないのは明らかではないか。

 社会、経済へのマイナス影響が懸念される政策を強引に推し進めるのは、責任ある政治とはいえまい。

 野党が求めるように、いったん離脱を延期して選挙で民意を問うという選択肢もあろう。あるいは、2度目の国民投票の可能性を探ってもいいのではないか。

 問題はジョンソン氏が議会をないがしろにする姿勢を変えようとしないことだ。

 離脱延期法に賛成した保守党議員には総選挙で公認しないと脅すなど、異論封じの強圧姿勢が目立つ。

 議会閉会も、審議を封じるためだ。甚だしい立法府軽視である。

 議会制民主主義のお手本とされてきた英国で起きた首相の独走は、深刻に受けとめねばならない。