業績悪化で従業員を休ませた企業に休業手当の一部を補助する「雇用調整助成金」について、安倍晋三首相が助成額の上限を大幅に引き上げる方針を示した。

 従業員1人当たりの日額上限を8330円から1万5千円にする案が検討されている。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う営業自粛や需要の縮小で、多くの企業が苦境に立たされている。収入が細る中、人件費などの固定費が経営を圧迫している。

 上限額の引き上げは、企業の負担を軽くし、従業員の解雇や雇い止めを防ぐ効果が期待できよう。

 ただ、手続きが煩雑で、支給に時間がかかるなど、助成制度には多くの問題が指摘されている。使いやすさを重視して改善を重ねていくことが必要だ。

 政府は新型コロナの感染拡大を受け、従業員の雇用維持を目的とした雇用調整助成金制度に特例を設け、支給要件を緩和した。6月末までを緊急対応期間とし、助成率を段階的に引き上げてきた。

 手続きについても、簡素化や迅速化を進めている。申請に必要な書類の記載項目を半減させたほか、審査人員を増やし、オンライン申請の導入も決めた。

 だが、それでも書類の記載事項は38項目もある。通常2カ月かかっていた支給までの期間は1カ月程度に短縮できたというが、さらなる工夫が求められる。

 雇用調整助成金制度は、いったん企業が従業員に休業手当を支払い、あとから助成が受けられる仕組みになっている。このため、企業が自己負担や煩雑な手続きを敬遠し、助成金を申請しない例も報告されている。

 従業員が手当を受け取れず、生活に困窮するような事態は避けなければならない。企業が算出する手当額の見込みを基に、国が先に助成するといった対応も検討すべきだ。

 政府はコロナ禍で休業せざるを得なくなった従業員を一時的に失業したとみなし、労働者からの申請で失業手当を支給する法改正を検討している。こうした労働者の支援策も実現を急いでほしい。

 経済活動の停滞で、企業には手元資金が底を突くことへの懸念が高まっている。東京商工リサーチの4月下旬の調査では、中小企業の4割が3カ月以内の決済に不安を抱えていた。

 企業倒産が続けば、雇用の場が失われる。助成額の拡大とともに重要なのは、必要とする企業への迅速な支給である。