感染拡大が一つの山を越えたとしても、気を緩めてはなるまい。

 政府が新型コロナウイルス特別措置法に基づき全都道府県に発令していた緊急事態宣言を、滋賀など39県で解除した。重点的な警戒が必要な京都、大阪、東京など8都道府県は、宣言が継続される。

 解除される県の住民の中には朗報と感じる人もいるだろう。

 しかし、ウイルスが消滅したわけではない。安易に以前の生活に戻ってしまえば、再び感染を広げることになりかねない。

 密閉・密集・密接の「3密」を避けるなど、感染防止策に引き続き気を配っていく必要がある。

 宣言が全国に拡大されて以降、外出や営業の制限などで社会や経済には大きな影響が及んでいる。

 解除を決めた背景に、新規感染者数や医療体制などに加え、国民生活へのマイナスを考慮する必要があったことは否定できない。

 政治的判断の要素が強いように思える。それだけに、解除後に国民の生命や健康をどう守っていくのか、政府としての責任をしっかり示すべきではなかったか。

 とりわけ、これまでの「行動変容」を促す対策が宣言解除にどうつながったか合理的な根拠に基づく因果関係の説明がほしかった。

 安倍晋三首相はきのうの記者会見で、対人接触の抑制や広域移動の自粛などを引き続き求めたが、国民の協力がどんな効果を生んだかが不明なままで、感染が再燃した場合に適切な対応策を打ち出せるのか。

 気になるのは、国内の感染者数の実態がはっきりしていないことだ。政府専門家会議の副座長ですら「今のところ誰も分からない」と国会答弁している。PCR検査数は目標に近づかない。

 第2、3波があることも想定して、政府は実情把握を急がなくてはならない。

 宣言解除が全国一律にならなかったことで、知事らも難しい対応を迫られる。これまでの休業要請なども解除後は法的根拠がなくなり、今後の感染防止の要請は「お願い」にとどまることになる。

 住民や事業者に自発的な協力を得るには、正確な情報提供と意を尽くした説明がより求められる。

 宣言が継続する大都市から解除された地域へ人の移動が増加することも心配されている。

 専門家会議は、感染状況などから都道府県を3区分して警戒してもらう方式を新たに提言した。自分が住む地域の状況を把握し、行動を考えるようにしたい。