強いはずの力士が亡くなった。28歳の若者でもあり、衝撃の広がりは角界にとどまらない。

 新型コロナウイルスに感染していた大相撲三段目の勝武士(しょうぶし)さんが先日、ウイルス性肺炎による多臓器不全のため、東京都内の病院で死去した。
 相撲の禁じ手などをユーモラスに紹介する「初っ切り」を担当し、ファンに人気があった。悔やまれてならない。
 新型コロナで死者が出るのは、角界で初めてだ。しかも、年齢が明らかになっている中で、20代の死亡は国内初とみられる。
 亡くなった経緯について、確認しておきたい。
 日本相撲協会によると、勝武士さんは4月上旬に高熱を出した。ところが、保健所や複数の病院に連絡したものの、受け入れ先が数日間も見つからなかった。中旬以降に病状が悪化し、集中治療室に入った。
 このため、入院の遅れが重症化につながった可能性が、医療関係者から指摘されている。
 感染拡大の第2波が来ることも予想されている。同様の事態が起きないよう、医療体制を整えておくべきだろう。
 これまでに国内で死亡した感染者のほとんどは、50歳以上である。しかし、海外では一定の割合で若者や子どもも重症化し、死亡する例が報告されている。
 関係者によると、勝武士さんは糖尿病を患っていた。
 若者だからといって、必ずしもも安全ではなく、特に基礎疾患のあるような人は、重篤となる可能性が高くなる、という。
 こうした危険性に対しても、細心の注意を払っていきたい。
 緊急事態宣言とその延長を受けて、日本相撲協会は24日初日の夏場所の中止を決めた。7月の本場所については、会場を名古屋から東京に移し、無観客での開催を目指している。
 とはいえ、力士から死者が出たことで、無観客であっても、本場所再開が危ぶまれる状況となったのではないか。
 勝武士さんが死去して協会は、新型コロナの感染歴を調べる抗体検査を、希望する力士ら全員に実施すると発表した。感染状況を把握し、専門家の助言を踏まえて対策を立てる狙いである。
 スポーツの大会やリーグ戦の中止、延期が相次ぐ中、ほかの競技の関係者らも注目するはずだ。
 検査結果から、今後に生かせる手だてを見いだしてほしい。