愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、物議を醸した企画展「表現の不自由展・その後」が、安全対策などを講じて近く再開される見通しという▼少女像などの展示を巡って「反日的だ」などと脅迫を含む電話やメールが相次ぎ、開幕から3日で中止に追い込まれた。再開できれば、表現や展示を萎縮させかねないあしき前例となる事態はひとまず避けられそうだ▼だが県が芸術祭への補助金を申請する際、円滑な運営を脅かす事態を認識していたのに申告しなかったとして、交付を中止した文化庁の決定については変更しない方針を萩生田光一文部科学相が示している▼これには釈然としない点もいくつかある。一つは議事録を「庁内部の事務協議」として残していないことだ。このため支援事業への交付を覆す重要な決定なのに議論したのかも分からない▼しかも採択に携わった6人の外部審査員の意見聴取をせずに内部だけで中止を決めたという証言もある。事実なら補助金の公正性を損なうことにならないか▼宮田亮平文化庁長官が沈黙を続けているのも謎だ。金工作家で東京芸術大学長も務めた人である。交付中止が表現の自由への無言の圧力となりかねないことぐらい百も承知だろう。中止は本意なのか、肉声を聞きたい。