感染の拡大防止を最優先に考えるべきだろう。

 埼玉県の農場と長野県畜産試験場で飼育されている豚で、相次いで豚コレラの感染が確認された。

 岐阜県で昨年9月、国内で26年ぶりの発生が判明して以来、飼育豚で感染したのは愛知、三重、福井に続いて計6県となった。

 中部地方から新たに関東地方にも波及し、感染の脅威が一段と深刻さを増したといえよう。

 国をはじめ関係機関の対応が後手に回り、ウイルスの封じ込めに失敗したといわざるを得ない。手をこまねいていては、全国に不安が広がるばかりだ。

 豚コレラは豚やイノシシに特有の伝染病だ。人にはうつらず、感染した肉を食べても影響がないことは確認しておきたい。

 この1年で岐阜、愛知を中心に40例以上の感染が確認された。殺処分された豚は、発生施設と肥育用子豚の出荷先の滋賀県、大阪府を合わせ13万頭を超えている。

 ウイルス拡散の主な要因とみられているのが野生のイノシシだ。養豚農家は進入防止柵の設置や消毒を徹底する一方、国は捕獲強化といった対策を柱としてきたが、感染したイノシシは石川、富山を含む7県に拡大している。

 農林水産省は9月下旬から、感染地域を囲み、イノシシ向けワクチン入りの餌を山間部に散布する「ワクチンベルト」構築に着手する。隣接する静岡や滋賀を含めて東西への防波堤にするというが、対応の遅れは否めない。

 今回発生した埼玉はやや離れている。他の小動物や鳥、人が運んだ可能性を含め、詳しい感染ルートの究明と対策が求められよう。

 不安を募らせる養豚農家から要望が強まっているのが豚へのワクチン接種だが、農水省は慎重な姿勢を続けている。

 豚肉が風評被害で売れなくなったり、国際機関が豚コレラの撲滅状態と認定する「清浄国」への復帰に時間がかかり、輸出に悪影響が出たりするのを恐れるからだ。

 農水省は、既存ワクチンを接種する場合は流通地域の限定が前提になると説明し、制限をかけずに済む未承認ワクチン導入の可能性を探るという。だが、有効性や安全性の検証が必要で、焦眉の感染防止に間に合わない。

 日本の清浄国資格は一時停止中で、2年間で終息できなければ来年9月で非清浄国となる。さらなる感染拡大は国内生産、流通への打撃が測り知れない。歯止めへの最善の手を尽くすべきだ。