9月入学の利点と課題

9月入学の利点と課題

 「受験生です。9月入学を強く求めます」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEに、高校3年の女子生徒(17)から痛切なメッセージが届いた。京都府内は新型コロナウイルスの感染拡大による休校が続き、学習に遅れが出ているが、他県で通学を再開したところもある。受験生の間で格差が開かないよう、9月入学で解消してほしいという。だが、9月入学は社会への影響が大きく、賛否両論ある。受験の不公平が生じさせないためにはどうすればいいか。

 女子生徒は宇治市在住で、公立高校で学んでいる。通学先は4月上旬に始業式を開いて以降、今なお休校が続く。自宅での学習を支援するため、高校はプリントなどの課題を郵送で届けているほか、教員が授業の動画を配信している。それでも、女子生徒は教室での授業に比べると学習の理解に差があることを実感し、「10月で3年の課程を終え、その後で受験勉強に専念するプランは難しくなった」と考えている。

 一方、一部の私立校でオンライン授業の導入が進み、感染者が少ない他県の高校は授業を再開した。進学校の中には2年の時点で3年のカリキュラムを先取りしているところもあり、多くの浪人生は受験勉強に集中できる。ただでさえ、本年度の受験は大学入試センター試験から大学入学共通テストへの切り替え時期になるだけに、「どんどん差が開いている」と焦りが募る。

 そんな状況で浮上したのが9月入学。一部の知事から、学習の遅れを取り戻せ、秋入学が主流の欧米への留学もしやすくなると導入論が沸き起こると、安倍晋三首相も「前広に検討する」と表明した。女子生徒も「9月入学になれば、休校で生じた2カ月の学習の遅れを取り戻せ、格差も解消できるのではないか」と期待する。

 だが、9月入学には慎重論や反対論も出ている。日本教育学会は11日、「拙速な決定を避け、慎重な社会的論議を求める」との声明を発表。学力格差の是正効果に疑問があり、就学年齢も大幅に遅れ、空白期間となる4~8月分の学費負担の問題もあると指摘した。

 「読者に応える」のLINEにも保護者から「学費を多く払うことはできない」という反対意見や、「感染の第2波の可能性があるのに9月に始められるのか」という疑問が届いた。

 では、受験生の懸念をどう払しょくすればいいのか。教育研究者からは「思い切って大学受験を改革すべき。細かい知識を問うよりも高校の成績や読み書きの能力を評価する形に変え、卒業要件の方を厳しくすべきだ」という意見や、「試験は高2までの学習内容から出題する方法がある」との提案が出ている。

 女子生徒は「もともと学校間格差があるのに、休校でさらに拡大されてしまう。9月入学が難しいのなら、せめて公的政策で何らかの対策をとってほしい」と強く訴える。