いよいよラグビー・ワールドカップ(W杯)の開幕が迫る。観戦チケットが手に入らず悔しい思いのファンもいるだろうが、そこにつけ込む手合いに気を付けたい。
この6月にチケットの不正転売を禁じる法律が施行された。インターネットで横行する「ダフ屋行為」を規制できるようになり、高額の転売や転売目的の譲り受けには、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。
ラグビーW杯や東京五輪・パラリンピックに間に合わせた規制強化で、不正な観戦チケットで泣く人が出ないようにとの狙いだ。
それでも国民生活センターは、チケットをめぐるトラブルは増加する恐れがあると注意を呼びかけている。
実際にラグビーW杯では、チケット販売開始とともにトラブル相談が寄せられたという。ネットで申し込み、ドル建てで高額を請求され初めて海外の非公式サイトと分かった。解約できず困ったという事例が紹介されている。
転売サイトで入手したチケットは無効だ。チケットには本人の氏名や番号が印字され、有償・無償を問わず譲渡できないと明記されている。やむを得ず観戦できない場合は公式サイトの「リセール」に出すしかない。
海外サイトをのぞくと、日本語で「今後この価格で購入できなくなる可能性があります」と売り込んでいる。法規制は外国まで及ばないのだ。
東京五輪・パラリンピックも心配になる。良い思い出を残すために対処する必要があろう。
チケット転売は人気アイドルの公演が高騰したことで、問題になった。コンピューターを使った買い占めもあり、一般ファンの楽しみを奪うとしてタレントらが連名で異議を唱え、注目を集めた。
国民生活センターによると、チケット転売の相談は昨年度2千件を超え、前年より2・4倍も増えた。法規制強化でどれだけ減らすことができるのか、チケットを仲介する業界の責任でもあろう。
チケット事業者と音楽業界などが悪質転売の根絶をめざし、協議会を発足。行けなくなったチケットは正規価格で取引するサービスの利用を促している。楽天などはフリーマーケットオークションに五輪チケットの出品を禁止した。
市場の競争に委ねると、チケットの高騰を招き、スポーツを含めた文化の享受に格差を生み出しかねないことになる。チケットは公正公平であるべきだ。