5月11日 日本が誇る
 ゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」が米国で「隔離生活の癒やし」「安らぎと社会的つながりを提供」と称賛され販売本数が首位に、という報道があったのは先月のこと。ゲームもアニメと並び日本人の暮らし、気質が生んだ世界に誇れる文化です。私自身も家族・友人に「鍛えられてきたなあ」。小遣いが乏しい時も工夫して楽しんだ。家で子どもと遊ぶ今も、人とつながれる重要なツールなのだと実感しています。

5月12日 テレビゲーム
 テレビゲームは「教養となり、人間関係が広がった」。学校でいじめに遭っていたがゲームに救われた、と告白するのは評論家の荻上チキ氏。のめり込む子を憂い、依存症を危惧し、条例まで作られている昨今ですが(私自身心配する親ですが)、そんな側面、効用も確かにあるのです。ゲームと共存する教材も急増中。まだまだ未知の部分が大きい新しいツール。頭ごなしに否定せず、徹底した注目、理解、検証が必要な時。

5月13日 トランプの絵札
 「わかい女王の手にもてる 黄なる小花ぞゆかしけれ」。北原白秋の詩集「思ひ出」(1911年)の一節で、幼子のトランプへの憧れがうたわれています。今は100円ショップで買えますが、昔は高価。くたびれきるまで大事に使ったもの。赤黒黄の絵札は子どもの目には確かにとてもエキゾチックで、いつまで眺めても飽きなかった。「不思議の国のアリス」のハートの女王、こわい強烈なキャラでしたね。「首を切れ!」なんて。

5月14日 人生を学んだ
 小さい頃に最も興奮し、豪勢に感じたのは「人生ゲーム」だと思います。米国生まれのすごろくですが、サイコロではなくルーレット、大人っぽくお札が扱え、株券や約束手形もあり、車で動き、パートナーを乗せる。
 日本には大阪万博前の1968年に登場し、時代の気分をつかみました。現在まで累計1500万個以上が発売された超人気ゲーム。これで最初に資本主義に触れ、人生の苦みをかみしめた御仁は多いことでしょう。

5月15日 今ひとたび
 家にこもりがちの今、カルタはいかが。中でも藤原定家の撰(せん)といわれる小倉百人一首は、長い歳月を超えた私たちの家庭を今も潤してくれます。海外でも漫画「ちはやふる」の影響で注目を集めているそう。日本人は幼少時から詩に触れている、なんて聞くとこそばゆいのですが、「坊主めくり」から近江神宮の頂上決戦まで! 四季があり恋があり生き死にがあるゲーム。非常に高尚でまれな遊びといえます。今日は国際家族デー。

5月16日 誰が描いた?
 厚めの4枚ずつ12カ月、48枚の花札は子どもの手にはあふれます。不思議な花鳥風月の絵で、藤の花に飛ぶのはホトトギス、柳はツバメ、カエルの隣の人は小野道風(能書家)…答えられる人、意外と少ないのです。複数の禁制をくぐり抜けた歴史あるゲーム。誰が描いたかは定かではない。京都の大石天狗(てんぐ)堂ウェブサイトのユーモラスな見解は「琳派の絵師の誰かが描いた絵を寄せ集めた、誰かの絵」と考えます、とのこと。

5月17日 将棋盤を買う
 将棋盤を新調しました。プラスチックにはない、パチンと清く響く木の感覚を味わいたく。材質は高級な順に本カヤ、ヒバ、カツラ、新カヤと聞く。予算(と棋力)を考え、薄い新カヤの卓上盤に。7歳の息子とまず始めたのは「将棋崩し」。音を立ててはいけない緊張度はタワー崩しゲーム「ジェンガ」以上。「回り将棋」は「ひょこ回り」と言いました。盤をぐるぐる延々巡っていると、ヒマだった子ども時代がよみがえります。

 

~わが家のカルタ取り~

 

<文 澤田康彦 絵・題字 小池アミイゴ>

 「るなの・ききは・らか・せふ…」「あき・ちふの・を…」「ドラえもん。せすら・はて…」

 わが家のカルタ取りの一場面です。昼間から小倉百人一首。中学生の娘と源平戦です。読み手は7歳の息子が「僕が」と立つ。

 ありがたいのですが、字は覚えたて、絵札の文字は古く小さく、「さ」を「き」、「や」を「せ」と読み、濁音は外し、「ゐ」は「る」、「ゑ」も「る」、難しい行は飛ばし、時に歌人の名前を読み、基本はふざける。ぶつ切り読み、呪文のようで謎だらけ、何の歌かを想像しつつ探すという新種のゲームと化しています。

 そういう条件下、上の3首はおわかりでしょうか? 難問?(答えは文末に-って日曜版らしいでしょ)

 その昔、中学校のカルタ大会で優勝した私である。娘は学校で全首覚え、漫画「ちはやふる」も愛読、主人公・綾瀬千早になったつもりで臨んでいるのかもしれぬが、しょせんひよっ子。父は絶対に負けはしません。想像力もあり、「にうだうさ…」が「入道前太政大臣」だとすぐわかる。ただ体が硬く、相手の膝元の札が取りにくいというのが難点だなあ。

 長期となったステイホーム。この機会にと子どもたちにゲームの楽しさを伝授しています。トランプ、将棋、五目並べ、花札、オセロ、パズル、人生ゲーム、サッカーゲーム、ツイスターゲーム…かつて親、友人と遊んだ日々を思いだす。果てしなくヒマで、滋養たっぷりの貴重な時間でした。

 トランプの絵札、百人一首のお姫さんお殿さん、花札の鹿や桐(きり)をじっと眺めて育った。だから子どもらにも自由に触らせているのですが、ある日息子がカルタ全部を次々手裏剣のように飛ばしていました。僧正遍昭が天津風に舞う…なんて言うてる場合ではありません。それはあかん! それ以降、1枚不足。紀貫之が行方不明中です。

 「人はいさ、がないぞ」と息子を叱る、「探せ」。「カニの歌だよ」と娘が説明する、「カニ匂ひけるだよ!」。「古今和歌集」の偉大な選者に対して、実に無礼な一家であります。

 冒頭の答え=「るなのききはら」→大弐三位「有馬山」/「あきちふの」→参議等「浅ぢふの」/「ドラえもん」→赤染衛門「安らはで」(編集者)

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澤田康彦 さわだ・やすひこ 1957年生まれ。編集者・エッセイスト
小池アミイゴ こいけ・あみいご 1962年生まれ。イラストレーター