1665年にペストが大流行したロンドン。居酒屋への立ち入りが禁止されたが、守らず入り浸った男たちが家族を亡くし悲しむ父親をからかい、浮かれ騒いだという▼「ロビンソン・クルーソー」の作者デフォーが著している。当時のイギリスの居酒屋は宿屋を兼業したり、選挙の投票や演説会、銀行、裁判所などの機能があり、地域コミュニティーの中核だったという▼日本の居酒屋は江戸時代に江戸で盛んになったが、京都では大正期に始まるらしい。加藤政洋立命館大教授の近著「酒場の京都学」によると、裏寺町にあった「正宗ホール」が草分けという▼当初は「五六人しか席がなく、さかなもくさやの干物かあたりめ」といった店だったが、旧制三高の学生のたまり場となり、寮歌を歌い文学を語った▼新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が39県で解除され、京都でも飲食店の営業時間短縮が緩和された。クラスター(感染者集団)発生の温床とされ、多くの店が営業を自粛し苦境に陥ってきた▼新しい生活様式として「オンライン飲み会」が広がりを見せているが、古来人々を結び合わせてきた居酒屋は、人の心が傷ついている今こそ必要な空間ではないか。感染防止対策を徹底しつつ、気の合う仲間と癒やしのひとときを持ちたい。