サウジアラビア東部の国営石油会社の施設2カ所が攻撃を受け、サウジ当局は同国の石油日量生産能力の半分(約570万バレル)の生産が停止したと発表した。

 原油市場には衝撃が走り、ニューヨーク原油先物相場は一時15%も上昇した。原油輸入の4割をサウジに頼っている日本にも、供給不安が広がった。

 ただ、攻撃には不可解な部分が多い。サウジと対立するイエメンの親イラン武装勢力フーシ派が犯行声明を出したが、米国、サウジとも「イエメンからの攻撃ではない」と指摘している。

 トランプ米大統領はサウジが行う検証結果を踏まえるとしながらもイランの関与を疑い、報復措置をとる考えを示唆した。

 これに対して、イランのロウハニ大統領は関与を全面的に否定、最高指導者ハメネイ師も米国と対話しないことを明言した。米国が模索していた首脳会談の実現は極めて難しくなった。

 仮に、米国などが攻撃への報復名目で軍事介入に踏み切れば、巨大油田や海上輸送ルートなどが衝突に巻き込まれる可能性があり、中東は大きな混乱に陥ろう。

 関係する国々には冷静な対応を求めたい。報復の連鎖を招くようなことがあってはならない。

 状況把握を難しくしているのは、米国とイランの主張が真っ向から食い違っているためだ。

 ロウハニ師は今回の攻撃について、サウジが主導する連合軍によるイエメン侵攻への対抗措置としてイエメンから行われたと主張、攻撃を「正当な自衛行為」だと指摘した。

 一方、ロイター通信は、米政府高官がイエメンのある南方からではなく西北西方向から攻撃された証拠があると語り、巡航ミサイルだった可能性に触れたと報じた。サウジ外務省も初期調査の結果として「攻撃にはイランの兵器が用いられた」としている。

 サウジの生産能力の回復には時間がかかるとみられるが、サウジは生産停止分の一部を在庫で埋め合わせると説明している。トランプ氏も米国の戦略石油備蓄を放出する用意があると表明した。

 原油を巡る各国の思惑には注意が必要だ。

 安倍晋三首相は今月下旬、トランプ氏、ロウハニ師との会談を予定する。米国、イラン両国とそれぞれ緊密な関係を持ち、双方に対話を促せる立場にある。中東の安定に何ができるかを探るためにも慎重な情報収集に努めてほしい。