自宅の庭先で養蜂をしている西村さん。秋の採蜜シーズンに採れたての蜂蜜を味わうのが楽しみだ(京都市下京区)

自宅の庭先で養蜂をしている西村さん。秋の採蜜シーズンに採れたての蜂蜜を味わうのが楽しみだ(京都市下京区)

群になって巣箱に集まるニホンミツバチ

群になって巣箱に集まるニホンミツバチ

 週に数日だけ蜂の世話をして、採れたての蜂蜜を味わう「週末養蜂」が注目を集めている。在来種のニホンミツバチは飼育に手がかからず、巣箱を手作りする日曜大工や自然派食品の人気の高まりが背景にあるようだ。市民講座の受講希望は右肩上がりで、初心者向けの「週末スタートキット」も売れ行き好調だという。

 「強い甘みだが後味まろやか。いくらでも食べられる」。蜂蜜の採取シーズンを迎えた9月中旬、京都市下京区の自宅庭先に置いた巣箱でミツバチを飼う「京(みやこ)・みつばちの会」代表の西村勇さん(71)は、自家製の魅力をそう語る。

 近年、西村さんの元には「蜂を飼ってみたい」「無添加の蜂蜜を食べたい」などの問い合わせが多く寄せられるようになった。同会などが開く「みつばち市民講座」の受講者は初回の8年前から増え、近年は定員を上回る50人以上の応募があるという。

 西村さんのアドバイスを受けながら養蜂を今春始めた会社員男性(46)=西京区=は「1カ月に1回巣箱を掃除するくらいで十分。会社員でも楽にできる」とほほ笑む。

 2人が育てているのは、野生のニホンミツバチだ。プロの養蜂家向けに品種改良されたセイヨウミツバチと比べると、採れる蜂蜜の量はわずかだが、手間いらず。設置した巣箱にうまく巣を作ってくれるかは運にも左右されるものの、ネットやテレビで養蜂の魅力が紹介され、人気が広がっているとみられる。

 「京都ニホンミツバチ週末養蜂の会」は、初心者向けのスタートキットを作って販売。養蜂の教科書や巣箱などをセットにし、今年は、5年前の3倍ほどに当たる約300セットが完売したという。

 「京・みつばちの会」の西村さんは「ニホンミツバチは花々の受粉を助ける益虫。ニホンミツバチが生息しやすいまちは、緑が多くて人にも住みよいはずだ」と話している。

■群が突然移動、スズメバチ襲来…細心の注意必要

 趣味の「週末養蜂家」が増えて近年脚光を浴びているニホンミツバチ。だが、営巣の環境が悪いと巣箱から一斉に逃げ出したり、ツバメやスズメバチに襲われたりと養蜂には難しさもある。人に対して攻撃的ではないが刺されないように細心の注意が必要だ。

 京都市の中京区役所は、まちなかの緑化推進のため、8年前から屋上庭園に巣箱を設けてニホンミツバチを育てている。

 毎秋の採蜜シーズンには蜂蜜の試食会を開いているが、ある日突然、群ごと離れて巣箱が空っぽになった苦い経験も。管理する京・みつばちの会は「ニホンミツバチは自然の生き物で環境の変化に敏感。住み続けてもらうには根気と運も必要」と言う。

 さらに自然界では天敵の存在も厄介だ。同会は2015年に二条城に巣箱を設けたが、スズメバチに頻繁に襲われるようになった。パトロールを強化したが、スズメバチの襲来は3年間続き、やむなく巣箱の撤去に追い込まれた。

 ニホンミツバチはおとなしい性格だが、「ミツバチ博士」こと京都学園大(現京都先端科学大)名誉教授の坂本文夫さんは、「刺されるのは手で振り払おうとした時がほとんど。養蜂時には、顔を覆う面布や手袋を付けてくれぐれも注意を」と呼び掛ける。