政府は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を秋田市の陸上自衛隊新屋演習場に配備する計画について、地元の強い反対を踏まえ見送るという。

 新屋演習場は住宅地や学校に近接し、ミサイル基地に適さない。計画断念は当然であろう。

 地上イージスは2017年12月に北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するため急きょ、2基の導入が閣議決定された。イージス艦同様のレーダーとミサイル発射装置を組み合わせ、ミサイルを空中で打ち落とすよう設計されている。

 政府は、山口県のむつみ演習場と共に、新屋演習場を候補地として配備計画を進めてきた。だが昨年、防衛省のずさんな調査や、住民説明会での職員の居眠りが発覚し、地元は猛反発。「地元の首長や議会、自民党県連も反対している状況ではもはや無理」(防衛省幹部)と判断したとみられる。

 政府は、日本全域を防衛するには地上イージスを東日本、西日本に1基ずつ配備する必要があると説明し、今なお東日本は秋田、西日本は山口が候補地との考えを崩していない。新屋演習場に代わる候補地として秋田県内の国有地を軸に選定する調整に入った。

 しかし、地元ではレーダーの電磁波による健康被害への懸念が根強い。有事の際の攻撃やテロへの懸念も拭えず、住民の不安はもっともだ。山口でも配備反対の動きがあり、地元同意の取り付けは手詰まり状態が続く。

 政府は「防衛は国の専権事項」とするが、地域との信頼関係構築を怠り、頭ごなしに計画を進めたつけが回ってきたとも言える。

 そもそも地上イージスの必要性には疑問符が付く。日本を取り巻く安全保障環境は刻々と変化し、北朝鮮は迎撃が難しい高性能ミサイルの開発を進めている。地上イージス配備は政府が目指す25年度以降にずれ込む可能性が高く、せっかく設置しても新たなミサイルに対処できない恐れがある。

 地上イージス導入は、トランプ米大統領の求めに応じた米国製兵器の「爆買い」との指摘もある。2基の取得費や配備から約30年間の維持・運用費で計約4500億円。重い財政負担になりかねない。

 本当に安全保障上必要なのか、巨額の費用に見合う効果があるのか―いったん計画を白紙に戻し、議論し直す時ではないか。

 新型コロナウイルス対策で、国家財政は厳しくなる。限られた財源は優先的に国民の命や暮らしを守るために充当すべきである。