ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が開幕し、日本はロシアに快勝した。

 4年前のW杯では、強豪の南アフリカを破るなど歴史的3勝を挙げ、日本でもラグビーへの関心が一気に高まった。目標とする決勝トーナメント進出に向け、世界の強豪相手にどんな戦いを見せてくれるか、期待が膨らむ。

 1987年に始まったW杯がアジアで開催されるのは初めてだ。力とスピードがぶつかりあう最高峰のプレーを楽しむとともに、ラグビーが持つ魅力を知る機会にもしたい。

 ラグビーは「多様性」のスポーツといわれる。ポジションによって求められる体つきや個性が異なることもそうだが、大きな特色はチーム編成が多国籍であることだ。

 日本代表は選手31人中、日本国籍を取得した8人を含めて15人を海外出身者が占める。海外出身者の起用はW杯スタート当初から続いており、徐々に増えてきた経緯がある。

 「日本代表」なのになぜ、と違和感を持つ人もいるが、国を超えてより強いチームをめざす編成のあり方は日本に限らず多くのチームに共通する。

 その理由は、サッカーW杯やオリンピックと異なり、必ずしも国籍を必要としないルールだからだ。その国・地域で両親、祖父母の1人が生まれた、あるいは本人が3年以上続けて居住―などの要件を一つ満たせば代表資格を得られる。

 こうしたルールは、19世紀の「大英帝国」で生まれた。大学などでラグビーをプレーしたエリートたちが、派遣先の植民地の代表として母国の代表チームと対戦できる道を残すためだったとされる。

 いわば植民地政策の遺産だが、「国」が前面に出がちな国際スポーツ大会で国籍を超えたチーム編成を認めてきたラグビーのあり方は、グローバル化が進む世界のありようを先取りしてきたといえないか。

 日本の次の対戦相手となる強豪のアイルランドは、英領北アイルランドとアイルランド共和国の統一チームだ。

 英国の支配下にあったアイルランド島は宗教対立などから1937年に南部が独立しアイルランド共和国になるが、北アイルランドは英国に残る。

 これに伴い、サッカーは北アイルランドが単独で代表をつくったが、ラグビーは19世紀から島の統一チームとして戦ってきた長い歴史を維持してきた。

 多国籍、多様性の価値観を大事にしてきたスポーツだからこそできたことだろう。

 共に並び立つ、肩を組み…と、アイルランド代表が国際試合前に歌うチームの歌「アイランズ・コール」には、島は一つの思いがよく表れている。

 多様な歴史や文化、ルーツを背負った選手たちが、互いに尊重し合い、力を合わせて頂上を目指す融和の精神は、社会のありようを考える上でも示唆に富む。

 「国」を盾に排他の風潮が強まる時代にはなおさらだ。

 決勝まで44日間の長丁場である。ラグビーの楽しさ、奥深さを満喫したい。