車が激しく往来する国道161号を無理に横断しようとする観光客。事故の危険性が指摘されている ※画像の一部を加工しています

車が激しく往来する国道161号を無理に横断しようとする観光客。事故の危険性が指摘されている ※画像の一部を加工しています

高島・白鬚神社

高島・白鬚神社

湖上の大鳥居(左奥)を眺めたり、撮影を楽しんだりする人たち。ガードレールには「横断禁止」の看板が掲げられている=滋賀県高島市鵜川・白鬚神社付近の国道161号

湖上の大鳥居(左奥)を眺めたり、撮影を楽しんだりする人たち。ガードレールには「横断禁止」の看板が掲げられている=滋賀県高島市鵜川・白鬚神社付近の国道161号

 滋賀県高島市鵜川の観光スポット・白鬚(しらひげ)神社の琵琶湖上にある大鳥居を見ようと、同神社付近の国道161号を横断する観光客が目立つ。一帯は交通量が多く、横断歩道がないことから、歩行者を巻き込む事故の発生が懸念されている。国や自治体、警察が安全対策に乗り出しているが、事故防止への有効策は見いだせていない。

 9月初旬の週末、観光客が境内から湖岸に向かって、車が激しく往来する国道(車道幅約11メートル)を横断する姿を多く見かけた。湖岸側には「横断禁止」の看板がある。2人の子どもを連れて横断した京都府内の40代夫婦は「危険は承知だが、間近で大鳥居を見たかった」、兵庫県内から訪れた30代女性は「看板を見ていなかった」と話した。

 看板は、同神社が年末年始に使っていたが、3年ほど前から常設している。梅辻春樹宮司(71)によると、2015年の日本遺産認定以降に観光客が急増。「大鳥居を見るのは境内からにして」と呼び掛け、境内前にコーン標識と柵を設けたが、横断者が後を絶たない。湖岸側のガードレールには隙間があり、湖岸へと降りる階段が設けられているが、梅辻宮司は「景観や宗教的儀礼のための配慮」と説明する。

 滋賀県警高島署によると、同神社を中心にした国道161号の上下1キロ区間で、18年末までの過去5年間で発生した人身事故は死亡事故1件を含む24件。歩行者を巻き込む事故はないが、5月に大津市で起きた園児死傷事故を例に挙げ、「同様の事故がいつ発生してもおかしくはない」とする。

 国土交通省は17年6月、近くを通るドライバーに注意を促す「横断者注意」の蛍光看板設置やカラー舗装を実施。県警も一帯を事故の危険性が高い「レッドゾーン」に指定し、速度違反取り締まりなど対策を強化する。高島市は17年12月、国や県と安全対策について話し合う情報共有会議を発足させた。

 だが、いずれもドライバーへの注意喚起にとどまり、歩行者対策を打ち出せていない。県と市は、国道161号の交通量緩和につながる神社山側のバイパス整備を国に要望しているが、着工時期さえ未定のまま。横断歩道などハード整備も「見通しの良くないカーブがあり、整備は困難」(高島署)という。

 県の交通ビジョン学識経験者懇話会委員を務めた立命館大理工学部の塚口博司特任教授(都市交通計画)は「従来の対策で、神社一帯での自動車事故の減少効果はあった。歩行者に向けた積極的な対策を打つ時期に来ている」と指摘。「観光地である以上、国道の横断自体を禁止するのは現実的ではない。歩行者が交通ルールを守り、ドライバーの注意を促すシステムが必要だ」と提言する。