昨年行われた陸上のインターハイ京都府予選(2019年5月、京都市右京区・西京極陸上競技場)

昨年行われた陸上のインターハイ京都府予選(2019年5月、京都市右京区・西京極陸上競技場)

 当たり前だと思っていた高校スポーツの風景が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で失われた。4月26日には今夏に予定されていた全国高校総体(インターハイ、IH)の中止が決まった。京滋の高校指導者から「選手にかける言葉がない」と悲痛な声を何度も聞いた。

 IHだけでなく京都府、滋賀県予選も中止になったことに思いをはせたい。全国大会へ進むチームや選手は一握り。多くの選手が引退する節目になるはずだった。予選に至るまでの過程に、授業だけでは経験できない部活動の価値があると感じていただけに、やるせなさが募る。IH連続出場を狙う伝統校の選手は重圧に耐え、初出場を目指す選手は強豪校の壁を崩すために練習を積む。全員の心が一つになれないもどかしさも体感する。けがで夢を諦めた後、仲間のサポートに励む選手もいる。「まだ未来があるなんて言葉はなぐさめにならない。高校生にとっては今、今年のインターハイなんだよ」。そう漏らした指導者の言葉が忘れられない。

 さらに、IH中止は進路への影響が大きい。ある高校指導者は「IH予選はスポーツ推薦を狙う生徒たちの入試」と話す。ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を活用して保護者も交えながら進路希望を聞いたり、つながりのある大学関係者にアピールしたりしている。2年生で全国大会に出場した選手はすでに勧誘を受けている場合が多いが、初の全国大会出場に懸けていた3年生にとっては死活問題だ。大学指導者は予選で力を発揮できなかった選手でも、体のばねや瞬発力といった身体能力、粘り強く努力する姿勢など、きらりと光る伸びしろに目を凝らしており「大学で成長を目指す選手たちが救われない」と嘆く。

 全国高体連はIH中止決定と同時に、3年生が成果を発表できる場の設定を都道府県の高体連に要望した。京都府高体連は未定で、滋賀県高体連は各競技の専門部に判断を委ねて後押しする方針だ。

 スポーツ現場での感染拡大防止策が手探りな状態の中、発表の場の設定は簡単ではない。競技によって屋内や屋外の違いや、選手同士の接触が避けられない場合もあり、対策は異なる。大学入試を考えると、3年生に残された時間は少ない。何より授業時間の確保が最優先となる。

 京都府は休業要請の一部が解除、滋賀県は緊急事態宣言が解除され、少しずつ社会の動きは戻りつつある。だが、部活に打ち込んできた高校生たちの夢は失われたままだ。「何とか発表の場をつくりたい」と情熱を持つ現場の指導者がいる。新たな希望があると信じて、気持ちをつないでいる3年生がいる。教育者の役割は、一人でも多くの子どもたちが新たな目標を持てるように全力を尽くすことだと思う。