頭をもう1匹の背中に乗せようとしているアメフラシ

頭をもう1匹の背中に乗せようとしているアメフラシ

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 女子大に勤めていると「うらやましいですなあ」と言われることがあります。いやいや、周りの多くが女性という環境での男性の立ち位置というのは、それなりに気を使うこともあり大変なのです。これは男女というものがある限り完全にはなくなりそうにありません。そう思うと、アメフラシのことが少しうらやましい。

 アメフラシは海にすむ雌雄同体の生き物です。一つの体の中に、オスとして働く部分とメスとして働く部分が同居しています。このような動物としては、他にカタツムリやミミズ、フジツボなどがいます。植物では、一つの花の中におしべとめしべがあったり、1本の木に雄花と雌花があったり、と雌雄同体はよく見られます。

 オスでもありメスでもあるアメフラシですが、1匹で子を作ることはできません。アメフラシのオスの部分、精子を渡す器官は頭の近くにあり、メスの部分である精子を受け取る器官は背中にあります。ですから交尾のときは2匹が縦にならび、前の個体の背中に後ろの個体が頭を乗せます。前がメス役、後ろがオス役です。

 さあ雌雄同体の本領発揮。後ろのオス役の背中は空いています。ここにもう1匹がやってきて頭を乗せ、さらにその背中に別の個体が頭を乗せ…と多くのアメフラシが数珠つなぎになって交尾することができるのです。前後を挟まれているアメフラシは同時にオス役とメス役をします。

 といってもアメフラシの全員がオス役とメス役を半々でこなすのではありません。体が大きいアメフラシは、小さいものよりメス役を多く担うことがわかっています。つまり、雌雄同体といっても、オスっぽさメスっぽさが個体によって違うということで、どうやら彼ら/彼女らをうらやむのは筋違いなようです。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。