日本電産の永守重信会長(2020年2月、京都市中京区)

日本電産の永守重信会長(2020年2月、京都市中京区)

 新型コロナウイルス感染症の流行が、企業の存立基盤を揺るがしている。経済活動の根幹であるヒトやモノの流れは世界規模で凍り付き、需要は文字通り「蒸発」した。モーター大手の日本電産(京都市南区)を創業した永守重信会長(75)は「コロナによる影響は1年半以上続く」と読む。コロナ後の社会を見据え、すでに働き方や人事評価の抜本的な見直しにも着手した。強い感染力を持つ新型ウイルスの厄災は、事業や仕事の在り方をどう変えていくのか。企業経営の「カリスマ」に聞いた。

 ―今回の「コロナ危機」は、過去の金融危機や自然災害と比べてどう違いますか。

 「大きく異なるのは人命だ。リーマン・ショックの時は徹夜も辞さず必死に事業を立て直し、1年後に最高益を出した。だが今回は感染すれば最悪命を落とす危険がある。3月から原則テレワークにしているが、生産性は3分の1に落ちた。事態が長引くと想定し、うまく回るようにシステムを作り直す」

 ―経営危機を何度も乗り越えてきました。

 「2011年のタイ洪水を教訓に世界中に生産拠点を広げ、45カ国に工場がある。最近の米中貿易戦争でも、中国から輸出する製品をメキシコに移すなど非常にうまくいった。だが今回はサプライチェーン(部品の調達・供給網)が乱れに乱れた。会社を経営して約50年になるが、こんな事態は初めて。部品調達は2次、3次下請けまで把握し、生産地も分散する必要がある」

 ―影響はどのくらい続きそうでしょうか。

 「1年半は続くと見ておいた方がいい。グローバルで経済が完全に元に戻るのは3年かかるだろう。だが悲観しすぎはいけない。コロナには学ぶことも多い。過去50年を振り返ると10年ごとに大きな壁にぶつかり、その度に問題が解決できた。今回も仕事のやり方を変えて乗り越えたい」

 ―テレワークの浸透で仕事風景は変わりつつありますが、一方で自己管理も必要です。

 「ドイツや米国は同じ環境で生産性が落ちていない。日本は住居が狭いという問題もあるが、根本的に『指示待ち族』が多い。プロアクティブ(積極的)な人材を育てると同時に、今の慣習やシステムを変えないとテレワークは機能しない」

 ―具体的な取り組みはありますか。

 「4月から人事評価制度を大きく変えた。実績を重視し、5段階で厳密に評価する。入社年など年数による賃金の加算も撤廃した。賞与で2倍の差が出たり、場合によっては10倍もあり得る。結果次第で明らかな賃金格差を付けていく」

 ―コロナ後の世界は一段と競争が激化すると予測しています。

 「企業も個人も厳しい競争になり、勝ち組と負け組がはっきりするだろう。業界内でも利益が出るのはせいぜい3位まで。大切なのは、極端に売り上げが落ちても驚かず、きちんと利益が出せるよう知恵を絞ることだ」