<その悦(よろこび)、あたかも故郷に帰りて知己朋友に逢うが如し>。感激ぶりを見聞記に書き留めたのは福沢諭吉である▼1872(明治5)年5月、学制に先駆け3年前から京都で開かれた「番組小」を見て回った。熱のこもった教育内容や指導を捉え、学んだ子女らが<文明開化の名を実に>すると興奮ぎみに記している▼きょう21日は、日本最初とされる「上京第二十七番組小」(旧柳池小、京都御池中の前身)の開校式にちなむ「小学校の日」だそうだ。物心とも地域住民が支えたのも、激動期を生き抜く力を子らに託す思いからだろう▼新型コロナウイルス対策の休校で、地域の希望の歓声が鳴りを潜めて久しい。再開の動きにはあるが、失われた授業や行事、地域格差を埋める手だてとして9月入学案が浮上している▼「禍(わざわ)い転じて」と欧米に合わせる大改革を期待する声も多いが、簡単ではない。文部科学省が示した検討案では、一斉移行だと来秋の新小学1年生が4割増えて教室、教員が足りず、5カ年の段階的移行も複雑で課題が多いという▼他に保育の待機増や新卒者の人手不足など影響は極めて広い。エイヤ!と拙速に踏み出すのでは混乱を広げるばかりだ。子どもや親が抱いている学びの遅れや格差への不安を一つずつ埋める丁寧さが肝要だろう。