乗客の減少やイベントの中止など新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける近江鉄道(2016年9月、滋賀県日野町・日野駅)

乗客の減少やイベントの中止など新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける近江鉄道(2016年9月、滋賀県日野町・日野駅)

緊急事態宣言に伴って運休しているレストラン列車「丹後くろまつ号」(2017年7月、京都府福知山市・京都丹後鉄道福知山駅)

緊急事態宣言に伴って運休しているレストラン列車「丹後くろまつ号」(2017年7月、京都府福知山市・京都丹後鉄道福知山駅)

 各地のローカル鉄道が苦境に立たされている。マイカー利用の増加や沿線地域の人口減少などで厳しい経営状況にあるところを、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校措置やイベント中止が直撃。乗客が減り、収支がさらに悪化している。一方で「地域住民の足」として運行を止めるわけにいかず、鉄道事業者はジレンマを抱える。

 「本年度は収益が改善できる予定だったが…」
 京都府と兵庫県の北部で京都丹後鉄道を運行するウィラートレインズ(京都府宮津市)の寒竹聖一社長は声を落とす。大型連休中(4月24日~5月6日)、輸送人員は前年同期比90%減と大幅にダウンした。普段は乗客の半数を通学利用者が占めるが、高校の休校などに伴い、定期券の払い戻しが毎日のように続いた。
 波紋は沿線地域にも広がっている。京都丹後鉄道は、レストラン列車で沿線地域の飲食店が地元食材を調理したメニューを提供してきたが、緊急事態宣言を受けて運休を決めた。寒竹社長は「沿線市町にお金を流せなくなった」と嘆く。
 近江鉄道(滋賀県彦根市)も3月、外出自粛の影響で定期外収入が落ち込み、輸送人員は2割減となった。4月7日に緊急事態宣言が出されると、乗客の減少はさらに加速。企画電車の運行やイベントの開催も見送らざるを得なくなった。
 広報担当者は「状況が一変した。4月の実績は3月より厳しくなることは間違いない。先が見えず不安だ」と危機感を募らせる。
 両鉄道の収益基盤は、ただでさえぜい弱だ。
 京都丹後鉄道の路線の一部は、第三セクター「北近畿タンゴ鉄道」(KTR・京都府宮津市)が1990年にJR西日本から運営を引き継いだが、沿線人口の減少による利用低迷で全国の三セク鉄道で最大の赤字を抱えた。経営を立て直すため、設備保有者と運行事業者を分けて路線維持のコストを軽減する「上下分離方式」を2015年に導入。高速路線バス事業者の子会社であるウィラートレインズが運行部門を引き継ぎ、経営改善に取り組んでいた。
 近江鉄道も、路線維持に必要な費用がかさんで赤字が25年間にわたり続き、路線の存続すら危ぶまれた。今年3月、滋賀県や沿線市町などの協議で全線存続が決まり、上下分離を含めた運営形態について議論が進められている。
 そうしたさなかに起きた新型コロナ禍は、ローカル鉄道が抱える経営課題を改めて浮き彫りにした。感染拡大が収束したとしても、大幅な減収の影響から立ち直るのは容易でない。
 交通経済学を専門とする関西大経済学部の宇都宮浄人教授は、高齢化で鉄道などの公共交通機関の重要性が今まで以上に高まっているとして「国や自治体が一体となり、新型コロナ禍で疲弊する鉄道事業者を公的に支えるべきだ。マイカーと公共交通機関を選択できてこそ誰もが豊かに生活できる社会になる。ローカル鉄道をどう守るのか、沿線住民も一人一人が考える必要がある」と強調する。
 近江鉄道の活性化に取り組む鉄道フォトライターの辻良樹さん(53)=滋賀県東近江市=も「鉄道は地域の文化と交流を育む要といえる存在だ。沿線住民には、コロナ禍の後で自分たちに何ができるのか、ぜひ考えてもらいたい」と訴えている。