安心して暮らせる社会づくりに向けた改革にどれだけ踏み込めるだろうか。

 急速に進む少子高齢化への対応を掲げ、政府は新たに「全世代型社会保障検討会議」を発足させた。

 安倍晋三首相を議長に関係閣僚と有識者で構成し、今後の社会保障改革の司令塔に位置づける。

 初会合で首相は「最大のチャレンジだ。システム自体の改革を進める」と意気込んだが、検討テーマに掲げた高齢者の就労促進や年金改革の項目は「既定路線」の追認との印象が拭えない。

 将来にわたり持続可能な社会保障をどう支え、分かち合うか、抜本的な課題に向き合わねば、屋上屋を架すだけになりかねない。

 社会保障を取り巻く環境はこれから一段と厳しさを増す。

 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める2022年以降、社会保障給付費が急増する。18年度の約121兆円から高齢者数がピークの40年に190兆円程度に膨らむ見通しだ。制度の見直しは待ったなしの課題である。

 新会議は、高齢者らの就労を促し、「支え手」を増やすのに主眼を置く。70歳まで働ける環境整備、年金受給開始の70歳超への選択幅拡大、厚生年金のパートらへの適用拡大などを話し合うという。

 こうした方向性は、6月に閣議決定した骨太方針などで示されている。既にあるテーマを束ねた形で、さらに何を議論するのか見えにくい。

 新会議メンバーは、中西宏明経団連会長はじめ経済財政諮問会議や未来投資会議など既存の政府会議の委員が並ぶ。労働者の代表はおらず、女性の有識者も1人だけで、はや年末に中間報告をまとめるという。当事者らの声を反映した深い議論ができるだろうか。

 大きな焦点は、国民の負担増に踏み込むかどうかだ。後期高齢者の医療費窓口負担の原則1割から2割への引き上げも論点とみられるが、国民の反発に予防線を張る政府の慎重さが目に付く。

 首相は7月、消費税率10%を超える増税は当面不要とし、新会議でも議論しない方向とみられる。

 一方で「打ち出の小づちなど存在しない」と首相も認めるように、財源論と切り離すのでは実効性ある改革議論は難しいだろう。

 老後の資金「2千万円不足」問題をはじめ、厳しい見通しを隠し、課題を先送してきた政府の姿勢に国民は不安を募らせている。税制を含め、今後の負担と給付の全体像を示していく議論が必要だ。