政府は、10月の天皇陛下即位に伴う儀式に合わせ、政令恩赦を実施する方針だという。

 恩赦は裁判で確定した刑罰を免除したり、失った資格を回復させたりする制度で、国家的な出来事や皇室の慶弔に伴って行われるのが通例となってきた。

 だが、司法権に対する行政権の介入ともいえるだけに、三権分立の原則と相いれない面がある。

 古くは、君主による恩恵として実施され、明治憲法でも天皇の大権事項とされてきた。現行憲法では内閣の助言と承認により天皇が認証すると規定されている。

 皇室の慶事と恩赦はどう関連するのか。政府は即位に合わせて恩赦を行う必要性を説明できるだろうか。前例に従ったというだけでは、国民の理解は得られまい。

 政府は今回、比較的軽微な事件で罰金刑を受け、資格を制限された人の復権を行うとしている。

 政令恩赦には、有罪判決を無効にする大赦、刑を軽くする減刑もあるが、今回は被害者への配慮や再犯防止などの観点から実施しない。復権の対象も懲役刑や禁錮刑を受けた人は除外されるという。

 政令恩赦は1956年の国連加盟、72年の沖縄復帰、89年の昭和天皇大喪、90年の上皇さまの天皇即位など戦後10回行われている。

 89年の政令恩赦では大赦や復権が実施され、1016万人余りが対象となった。90年は約250万人に上った。驚くほどの人数となったのは、復権の対象に道路交通法違反者も含まれていたためだ。

 見過ごせないのは、選挙違反で停止された公民権を回復する復権が多かったことだ。89年は約1万5千人、90年は約4300人に上った。今回も、選挙違反からの復権が多くなると予想される。

 選挙違反は民主主義の根幹を揺るがす犯罪だけに、安易な救済への批判は当時もあった。同じことを繰り返してはならない。

 恩赦には、確定判決の誤りを救済する意味合いもあるという。だが、刑事政策としては中央更生保護審査会が個別に審査して決める常時恩赦や特別基準恩赦がある。仮釈放制度も機能している。

 こうした仕組みが存在するにもかかわらず、政権が一律に刑の効力を減免する政令恩赦のあり方が今の時代にふさわしいかどうかはもっと議論されてしかるべきだ。

 かつて、恩赦に民意を反映させる審議機関の必要性が指摘されたことがあった。政令恩赦の存廃について、国民的合意を探る時期にきているのではないか。