京都光華中の英語の授業。電子黒板の横に授業の流れを示す一覧があり、周りに注意を引くような掲示物はない(京都市右京区)

京都光華中の英語の授業。電子黒板の横に授業の流れを示す一覧があり、周りに注意を引くような掲示物はない(京都市右京区)

コミュニケーションスキルなどを身に付けるための通級指導教室(京都市左京区・高野中)

コミュニケーションスキルなどを身に付けるための通級指導教室(京都市左京区・高野中)

 子どもたちが障害などのあるなしにかかわらず一緒に学べる場を保障する「インクルーシブ教育」が注目されている。知的な遅れのない発達障害の児童生徒を含む学級づくりなど、特徴的な取り組みを取り上げ、現状と課題を探る。

■発達障害に配慮、授業に工夫

 京都市右京区の私立京都光華中・高。訪れると、中学2年の英語の授業が行われていた。電子黒板の横には「Q&A」「Activity(アクティビティ)」など授業の流れを示す一覧がある。終わった項目に教員がチェックを付け、授業の中で今、どの部分を進めているかを生徒が確認できるようになっている。

 同中・高ではこのような授業法を、ほかの学年、クラスでも統一して取り入れている。小阪靖子教頭は「授業の形を決め、やるべきことと手順を明確にしておけば、生徒は安心して授業に臨める」と説明する。

 同校がこのような取り組みをする背景には、発達障害の可能性のある生徒への配慮がある。発達障害があると見通しのない状況に不安を感じたり、注意が散って授業についていけなくなったりすることがあるためだ。教室をよく見ると前方に注意を引く掲示物はなく、生徒の机の上には最低限の文具と教科書のみが出されて、集中しやすい環境が整っていた。

 これらは「授業のユニバーサルデザイン(UD)」と呼ばれ、インクルーシブ教育の観点から取り入れる学校が増えている。誰にとっても分かりやすい授業を行うことで、障害の有無にかかわらず一緒に学ぶことを目指している。小阪教頭は「中高生は多感な時期。支援が必要な場合でも、自分だけ支援されることに抵抗を感じがちなので、どの生徒にとってもクリアで理解しやすい授業をつくることが重要」といい、学習や学校生活をサポートする支援員もさりげなく手助けしているという。

■健常児と学ぶ環境は未整備

 公立学校でも同様の取り組みが進められている。文部科学省が公立小・中を対象に行った2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童生徒のうち「知的な遅れはないものの、学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒」の割合は約6・5%。そういった子どもたちの学びを支えるため、京都府内の教育委員会は授業のUD化のほか、個に応じた学習方法を探ったりコミュニケーションスキルを身に付けたりするための「通級指導教室」を拡充している。

 ただ現在の教育制度では、障害が軽度でなかったり知的障害があったりする児童生徒は特別支援学級や特別支援学校に在籍することが多く、健常児とともに学ぶ環境が整っているとは言いにくい。同学級、学校の在籍者は年々増え、文科省の2017年度調査では、支援学級の児童生徒数が07年度と比べ約2倍、支援学校は同1・3倍となっている。

 府や市の教育委員会は、「特別支援学級や支援学校では、それぞれの障害に応じたカリキュラムに基づく指導が行われており、多様な学びの場を提供している」とするが、子どもが京都市立小の育成(特別支援)学級に在籍するという母親は、「娘の場合は通常学級との交流が少なく、この先も健常者の同級生がどのように過ごしているのか知らないまま生きていくのだろうか、と考えてしまう」と心配する。

■インクルーシブ教育 排除されやすい子どもを含む全ての子どもたちの多様なニーズに応え、それぞれの学びが最大に豊かになる教育システムを構築するプロセスのこと。国連教育科学文化機関(ユネスコ)などによる国際会議で1994年に提唱された。日本では障害者を含む教育として語られることが多く、2012年の中央教育審議会の報告では障害者の権利に関する条約を引用し、「人間の多様性を尊重し、障害者の能力を可能な限り発達させ、社会に効果的に参加することができるよう、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み」と説明している。