日米貿易交渉が決着した。

 日本が懸念していた米国産コメの無関税枠は設けられないが、日本は牛肉や豚肉、小麦、ワインなどの農産品市場を環太平洋連携協定(TPP)と同水準で開放する。市場規模は約7800億円になる。

 一方で、安倍晋三政権が米国に対し強く求めていた日本車と自動車関連部品の関税撤廃は見送られた。

 安倍政権は、コメ分野で米粉やもちなども含めて無関税枠を作らせなかったことや、脱脂粉乳やバターなどで新たな米国産輸入枠を認めなかったことなどをあげ「善戦」だったとアピールしている。

 だが、米側が対日輸出額の大きい農産品の市場開放を勝ち取ったのに対し、日本は本来目指していた自動車などの工業分野で前進を得られなかった。とても善戦とはいえまい。

 交渉入りを決めてから1年での短期決着だ。大統領選を来年に控えて外交成果を狙うトランプ政権に、日本が実質的に譲歩を強いられたといえる。

 オバマ前政権が主導したTPPでは、米国は日本車など日本製の工業製品に対する関税をすべて撤廃する約束になっていた。

 しかし今回の協定で製造業の恩恵は化学分野などに限定されることになる。

 米国の自動車産業が集中する地域は大統領選で激戦地となる見通しで、トランプ政権にとって自動車関連は譲れない分野だった。

 茂木敏充外相は自動車部品などについて引き続き交渉する考えを示したが、具体的な交渉期限などは示されておらず、今後の協議でこの分野の関税撤廃が認められる見通しはたっていない。

 日本は将来的に米国をTPPに引き戻す狙いを持っているが、米国に「TPP水準」を農産物だけに都合良く利用されたといえないか。

 多国間交渉を避けて2国間でものごとを決めようとするトランプ氏の思惑通りに進んだという面は否めない。

 コメや乳製品などで義務的に輸入する枠は設定されなかったが、安価な農産物がこれまで以上に国内に流入することは確実だ。

 影響を受ける国内農業については、実効性のある対策を速やかに取ってほしい。

 協定では、米国が日本産牛肉の低関税枠を拡大し、日本から米国への輸出増が期待される。意欲のある生産者を支援する政策も必要だ。