「響け!ユーフォニアム」をきっかけに宇治茶などの研究も進め、同人誌などで魅力を紹介している夷さん(京都市中京区)

「響け!ユーフォニアム」をきっかけに宇治茶などの研究も進め、同人誌などで魅力を紹介している夷さん(京都市中京区)

 京都アニメーション(京アニ)の放火殺人事件から2カ月が経過した。作品「響け!ユーフォニアム」の舞台となった京都府宇治市をたびたび訪れ、ブログなどで「聖地巡礼」の紹介を続けてきた男性が、事件のショックに負けまいと、新たに同人誌「宇治のたしなみ 響け!ユーフォニアム舞台解説」を作成した。作品の展開やせりふを紹介しつつ、宇治茶など地域の文化や歴史をふんだんに盛り込んだ。

 「夷(ゑびす)」のハンドルネームで、京アニ作品などを研究する公認会計士の男性(37)=京都市下京区。

 夷さんは「たまこまーけっと」(2013年)でモデルとなった出町桝形(ますがた)商店街(上京区)近くに住んでいたのが縁で、聖地巡礼の情報を積極的に伝え始めた。

 吹奏楽部員の青春を描いた「響け!―」シリーズ(15年開始)では、宇治に「100回を超える」ほど通い詰めた。「信号の塗装のはげ具合や宇治橋西詰めの時計の角度など、写真と比べても違いが分からないほど忠実な再現に驚いた」

 放映後すぐに場所を特定してブログで伝えたこともあり、「未踏峰の山を最初に登る感覚に似ている」。調べる中で、宇治川の水位や茶畑の覆いなど、時間や季節による細かな描写の変化も発見。京アニ作品のすごさとともに、宇治の風物や奥深い文化にも引かれていった。

 17年には「響け!―」や源氏物語を軸に、宇治での「ものがたり観光」の可能性を探る京都文教大の研究会が発足し、夷さんも一員に。物語や聖地巡礼の「大先輩」に当たる源氏物語に刺激を受け、昨年発行した同人誌「宇治を識(し)る。響け!ユーフォニアム舞台解説」では宇治十帖を紹介。また、高い品質を指す「京アニクオリティ」が持続的に生み出される背景を、公認会計士ならではの経営的な視点から考察した。

 今夏、作品のモデルとなった高校の吹奏楽部や、宇治茶などを特集する同人誌第2弾の完成直前に事件は起きた。発行の中止も考えたが、八田英明京アニ社長の再起に向けたメッセージを読み、「何年かかっても京アニには作品をまた作ってほしい。でも自分が今やめたら、その思いと行動が逆になる」と奮起を決めた。

 冒頭に「#PrayForKyoani(京アニに祈りを)」と加え、同人誌即売会「コミックマーケット」(東京)に出展して大きな反響を得た。

 夷さんは「われわれファンが京アニ作品の魅力を引き出し、盛り上げ、応援する番だ」と思いを込める。