愛称「こうのとり」は、大切なものを運ぶ任務から公募で名付けられた。コウノトリが赤ちゃんを運んでくるという伝承にちなみ、地球を周回する国際宇宙ステーション(ISS)へ食料や水、実験機材を輸送する無人補給機HTVにぴったりだ▼宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2009年に初号機を投入してから11年、これまで8回の打ち上げの成功率は実に100%。与えられた任務を完遂し、国際貢献を果たしてきた▼東日本大震災時、管制設備の被災を克服して運用を続け、米国の補給機トラブルで急きょ、予定外の物資運搬を代行したこともあった。さまざまな出来事を経験し、最後となる9号機がおととい、ISSへ旅立った▼最終機を載せたH2Bロケットも今回限りで引退。ともに花道を飾るはずだったのに、あいにくコロナ禍の自粛で鹿児島・種子島宇宙センター周辺の見学場は全て閉鎖されてしまった▼無観客の少し寂しい打ち上げとなったものの成功、25日にISSに到着する。輸送任務は今後、将来の月や火星探査を見据えて新技術を試す後継機HTV―Xに道を譲る▼こうのとりは、貨物専用ゆえに華やかさを欠くとはいえ、確かな技術力で宇宙開発を支えてきた。荷物とともに、宇宙への大きな夢も運び続けてきたとも言える。